『黒の契約者』第13話「銀色の夜、こころは水面に揺れることなく……前編」〔感想〕

『DARKER THAN BLACK-黒の契約者-』第13話。あの夜、確かに輝いていた満月の光。優しい声。それらがもたらすさざ波に、彼女の心は何を想うのか。

北欧の湖に面した静かな街。 自宅でピアノを学ぶ愛らしい盲目の少女、キルシー。
それがかつての銀(イン)の姿だった。
大人びた言葉を口にするけれど、熱意あふれるピアノの先生・エーリスに頬を膨らませて拗ねたり、お母さんから子ども扱いされればカチンときたり。
視力を失っていても、優れた感性と快活さを持っていたキルシー。
そして満月の月明かりが降りそそぐ夜は、彼女の最もお気に入りのひととき。
「好きなの、この光。 見えなくても、感じる。 銀色を……」


新宿のビルの陰で任務を遂行中の銀。足元には水溜りと、航空機事故を伝える新聞紙。
ふと、脳裏に甦る記憶。
事故の知らせを受けて空港へと集まった乗客の家族達。 数多くの報道陣。 喪服姿で泣き崩れる母。
その傍には、なすすべも無く立ち尽くす自分…。


黒(ヘイ)の所属する謎の組織に対して、その内情を探るべく新たな契約者が東京へと送り込まれた。 歌声であらゆる物体を破壊するベルタと、ドールが放った観測霊を取り込む力を持つイツァーク。
二人に下された指令は、ターゲットである黒達のメンバー構成と素性、能力を明らかにすること。
彼らの動向を探査していた銀も、イツァークによって大切な観測霊を奪われてしまう。
精神の一部とも言える観測霊を失ったことで銀は激しい衝撃を受け、意識を喪失して彷徨ううち、初めて来た街に立っていることにようやく気づく。
        「ここ、どこ…?」

非情な契約者を装うイツァークだが、その対価は『詩を書くこと』。能力を得る前は詩など縁が無かったため、頭を捻りながら苦心せざるを得ない。
そんなイツァークに「いいことじゃないか。まだ動く心があるってことだもの。」と呟くベルタもまた、かつては端役の歌手としてごく普通の日常を過ごしていた。
契約者の悲哀が二人の横顔に漂う。


「組織の情報を引き出される前に銀を取り返せ。最悪、ドールは使い捨てても構わねぇ。」
黄(ホァン)の冷酷とも取れる言葉を聞いて、黒は公衆電話の受話器を投げつけるように置く。
《 そんなことはさせない。何としても彼女を無事に見つけ出さなければ。 》

手始めに、黒とマオは銀の住むタバコ屋を訪れる。 まずは偵察役のマオが店の中を覗くが、やはり銀の帰宅した様子はない。
そこへ近づいてきたのはなんと、天敵とも言うべき凱と助手のキコ。
数日前、はるばる北欧から来日したエーリスが久良沢探偵事務所を訪ね、キルシーを捜すよう依頼していたのだ。
少し離れた場所にいる黒(ヘイ)にマオは連絡を取る。
「探偵? …あれか。」 「あれだ。理由は判らないが、銀を捜しているらしい。」 「分かった。動きがあったら教えろ。」 「後を付けろってか? 俺は面が割れてる。」
その時、黒の視界に入ってきたのは…近所の黒猫。
「ありふれた顔だ。気にするな。」
「うぐぐ~~っ!」
さすがのマオも言葉に詰まる。


日比谷野外音楽堂の前。 音合わせ中のピアニストが奏でる音色に惹かれるように、銀が立ち止まった。
音楽とともに、断片的に甦る記憶。
《 穏やかな先生の声。 でも、お母さんも彼に秘かな想いを寄せている。 私…気づいてるもの。 だけど、何も言えない。 言いたいことはたくさんあるのに。 だから、ピアノにその思いをぶつけるの… 》

偶然通りかかったキコが銀を発見し、一緒にファミリーレストランのドリンクバーへ。
愛らしい存在を見ると放っておけないキコは、銀の口の両端を人差し指で持ち上げて「まずは形だけ笑ってみたらどうです? ほら、可愛くなりましたよ!」と嬉しそう。
            「可愛い…?」
一人になり、銀はそっと自分で口の両端を持ち上げてみる。 どことなく弾むような気持ち。

だが突然、観測霊の呼び声が銀の心を捉えた。

空き地へと向かった銀を待っていたのは、イツァーク。 組織の情報を得るために観測霊を使って誘い出したのだという。彼女に手を差し出し「…さあ、おいで」と声を掛ける。
無表情に見えた銀が、不意に身を翻す。 しかし、追いすがるイツァークに捕らえられてしまう。
そこへ襲い掛かったのは、マオの鋭い爪。 さらに仮面を装着した黒が羽交い絞めに。
形勢が一気に逆転したかに見えたが、ベルタの凄まじい破壊力が降りそそぎ始める。

断裂し、激しい勢いで落下してくる鉄骨。 目が見えず、観測霊も奪われた銀は立ちすくむしかない。
         「銀!」
黒はとっさに駆け寄り、自分の体を盾にして鉄骨から銀を守った。 少しの間を置き、震えながら銀の瞼が開く。
「できるだけ離れているんだ。」
気遣うように言い聞かせると、イツァークを追って黒が走り去る。 よろめきながら起き上がる銀。
そこへ、エーリス達が駆けつけてきた。 「キルシー! 分かるかい、僕だよ。 エーリスだ。」
「…エーリス?」
ピアノを練習した記憶が走馬灯のように浮かぶ。 銀はゆっくりと頷く。


銀を連れ去られ、敵の契約者も逃してしまったことに黄(ホァン)の憤慨は収まらない。
「お前達と俺を一緒にするな!」と息巻くホァンに対して、黒は静かな声をぶつける。

「安心しろ。 一緒だなんて思っちゃいない。 惨めにビクビク怯えて…そんなみっともない感情は、俺たち契約者は持ち合わせちゃいない。 幸いな。」

だがホァンが恐れているのは、組織が下す過酷な処断。
「生意気言うな! お前達は何も分かっちゃいないんだ。組織の怖さをな! いいか、銀を見つけ次第殺れ! お前らがやらないなら、俺が殺る。」


無事に探偵事務所へ戻った凱たち。 何者かに追われている銀を心配して、エーリスは帰国までの間の保護を求める。
何やらマニアックな計画を思いついたキコの提案を受け、一行は静かな温泉地を目指すことに。
列車内で、エーリスは「落ち着いたら一緒に北欧へ帰ろう」と銀に優しく促す。
「…帰る?」
「そう、僕たちの故郷に。」

ふっと銀は黙り、それからはっきりとした口調で呟いた。

       「帰らない…。 …帰らない。」



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黒が落下する鉄骨から銀をかばったシーン、胸が熱くなりました。
彼にとっても、マオにとっても、銀はかけがえのない大切な仲間。
必死で守ろうとした黒は、契約者というよりも、「一人の人間として」さらに大きく成長していたのですね。

おそらくそこにあるのは、二度と戻らないニックを見送ることしかできなかった辛い体験
《 もう、誰も失いたくない。大切な存在を。 》
そんな強い想いが、彼の中に芽生えている。

自分を大切に思ってくれる仲間がいるから、銀は故郷へは「帰らない」と言ったのかも。
たとえドールだとしても、黒たちと接する中で感情が徐々に戻っているように感じるのです。

甦ってくる、幸せだった頃の記憶

全てが楽しい思い出ではないけれど、その積み重ねが『人の一生』なのかもしれない。
彼女には、人生をしっかりと取り戻してもらえたら。

ただ、…もっと辛い記憶も眠っている。
それと向き合った時、果たして銀は何を選択するのか。

飛行機事故で亡くなったのは、誰なのだろう。
銀の記憶にまだ登場していないお父さんか。 それとも、母親・アンニの激しい動揺から見て、もっと別の人?
アンニの心の中にいたのは、たぶんエーリスのはずだけれど…。

このシーンですでに銀は今の服装を身に付けていることから、あの服には〔喪服〕の意味も込められているのかな。
もしかしたら、ゲートが出現したことと事故との間に関わりがあるのかも。

かつて銀が大好きだった「満月の月明かり」
再びその光を浴びる時、彼女は新しい世界へ踏み出すのだろうか。


エーリスがなぜ「凱」の名前に思わぬ反応を見せたのかも、気になります。
本当は別の名前の人物に調査を依頼する予定だったのか。
あるいは、別の件で凱はリストアップされていた? …ターゲットとして。
一見すると心優しいピアニストの彼にも、まだ明らかにされていない背景がありそうですね。


マオに自然な感じでジョークが言える黒。 木内さんの演技に「さすが!」と感動の連続
そしてホァンに対しても、自分の思うところを言い返せるようになってきました。
感情を出すことができるということは、黒にとって大きな変化ですよね。
素直に自分を表現する黒を受け止めてくれた、ニックの存在が大きいのかもしれません。
次回がますます楽しみ☆


ベルタとイツァーク。 それぞれに、まだ揺れる心を抱えている契約者。
『なぜこんな事をしなければならないのか。』
二人の心の中には、人間的な迷いがある。
それは、時として自らを危険にさらすことになるかもしれない…。

敵なんだけど、なぜか憎みきれない。 そんな二人にも注目していきたいと思います。






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