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zoom RSS 『黒の契約者』第22話「粛正の街は涙に濡れて……後編」〔感想〕

<<   作成日時 : 2007/09/08 19:11   >>

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「これ以上…俺から何を奪うつもりだ?!」
『DARKER THAN BLACK-黒の契約者-』第22話。仲間のために命を張って戦いを挑む黒(ヘイ)。そして、自分の信じる道を貫こうとするノーベンバー11。新宿の街で、二人はそれぞれの人生を選択する……。



眠らされていたマオは、ふと目を覚ました。赤いソファに横たえられている自分。窓際のデスクには、向こう側を向いて金髪の男が座っている…。
重厚なマオの独白。
【契約者は合理的に物事を考えると言われている。 それは、いついかなる状況においても努めて冷静に、最善の答えを導き出すことを示している。】
椅子がくるっと回る音。そちらへ視線を走らせると、一糸まとわぬ姿のノーベンバー11が微笑んでいた。
「お目覚めかい? 猫ちゃん」
全身が総毛立つマオ。 《 …ど、どうなっているんだこれは…っ?!》
【恐れを知らないから? そうじゃない。契約者だってちゃんとビビッてる。感情的にならないだけだ。】
不意に、背後のドアが開く音が聞こえた。 全身から冷や汗を滲ませつつ身構える。
入ってきたのは、前後をブリタとウェイに守られたアンバー。手を後ろに組み、にこやかな笑顔。
【まして、敵のアジトに連れ込まれたとあっては。】
固まっていたマオは、ついに決心した。そろりと床へ飛び降り、何食わぬ顔で出口へ向かって歩き出す。
アンバーたちの間を通り抜け、あと少し…! だが…
「どこ行くの? 猫ちゃん!」
マオは硬直した。
【俺は契約者だ。訳あって、今は猫だ。 しかし、現状に対する合理的判断は下せる。 敵の只中にいる俺。 最善の策は、これだ…!】

「にゃ〜〜お…☆」




外事4課の面々は、未咲がパンドラに捕らえられて取調べを受けたことに憤慨中。
河野が「まったく、課長を調べたって何も出てきやしないってのに!」と怒れば、斎藤も「しかし、内閣府からパンドラに出動要請が出るとは…」と不審がる。
今回の事件では、なぜか捜査権限までもが警察からパンドラへと委譲されてしまったのだ。
《何か…腑に落ちない……。》
未咲は一人物思いに沈む。

公安部長室に呼び出された未咲は、思いがけない人物と再会した。 ノーベンバー11の相棒、エイプリルとジュライ。そして彼らの上司・ディケイドだ。
「率直に聞きます。ノーベンバー11の居場所を知っていますか?」 「…お言葉を返すようですが、それはこちらの台詞です。」
彼が姿を消したのはMI6の任務の一環だと考えていた未咲だったが、実情は違っていた。
「彼とは1週間、連絡が取れていないの。」 エイプリルが肩を落として答える。
「我々も、それを知りたいのです。彼がまだMI6の最高のエージェントなのか、それとも、テロリストの手先になり下がったのか。」
未咲はノーベンバーの言葉を噛み締める。
《でも、彼が仲間を裏切るとは思えない…。》


EPRが秘かに本拠地とする高層ビルの中、和風にしつらえた広い1室。
その頃、ノーベンバー11はアンバーと対峙する形で座っていた。 ブリタ、ウェイとともに胡坐をかいて円座に着く。
「会うたびに君は若返るんだな、フェブラリー。 いや、『アンバー』とお呼びすべきかな?」
「あなたは何も変わらないね。ノーベンバー11。」
幼い声音が静かに響く。
EPRが用意した黒のスーツを着こなしたノーベンバーは、余裕の微笑を浮かべて相手を見つめる。
「時間もあまりないからお話しよっか。何でも訊いて。」
普通の猫を装うマオは、アンバーの膝に抱かれて冷や汗をかきながら必死に丸くなる。
《ここはグッと辛抱だ……!》

「何でも? じゃ、好きな食べ物は?」 「リンゴ。」 「奇遇だな、私もだ。」 「うそばっかり☆」「お互い様だろ?」 笑う二人。
「さて、そろそろ本題に入りたいんだが。」 「どうぞ」
「私が訊きたいのは唯一つ。君が裏切った例の【組織】とは、一体何だ?」
ビクッとなるマオ。 《俺達の組織……!》
「ちょっと待って。その話をするために、もう一人ここに呼んである。」
アンバーの合図を受けて、ブリタが立ち上がった。ドアを開け、一人の初老の男性が招き入れられる。

「おお…!」 目を丸くしながら入ってきた小柄な男。ガウンを身に付け、物怖じする様子もない。
「シュレーダー博士!」 ノーベンバーは思わず声を掛けた。
「君は? 彼らの仲間かね?」 「あなたの話次第では、そうなるかも」
アンバーの淡々とした言葉に、博士は大げさなため息をつく。
「組織のことも含めて、さっきの話を彼にしてあげて。」
「はぁ……。ここ、ノーマルの比率はどれくらい?」 「え?」 「だから、契約者じゃない人間はどれくらいいるの」
「みんな契約者。」 「はぁぁ…。私の味方はその猫くらいか…。」 「この人も契約者。」
あっけらかんと看破され、マオは飛び上がりそうになる。
《み…見破られていた……!!(汗)》

「さっきの約束はまだ生きてるのか? 『何を聞いても私を殺さない』って。」
博士の沈痛な問いかけに、アンバーは真剣な表情で応える。「約束する。」
ようやく決心した博士は、用意された円座にどっかと腰を下ろした。
「私の研究は極めて単純だ。 成功すれば、契約者は全員、この星から消える。」
マオは自分の立場を忘れて思わず叫ぶ。
「…なに…っ?!」


昼間の高層ビル街。 黒(ヘイ)は双眼鏡を使い、EPRの本拠地となっているビルを偵察している。 後ろには、非常階段に座る銀。
「あれか。」 「そう。」
「マオの奴はまだ生きてるのか?」 「糸が切られる前までは…生きてた。」
ホァンは疑問を口にする。「アンバーの目的は何だ? こないだは銀、今度はマオ。しかも、MI6の伊達男付きときたもんだ。」
沈黙していた黒は、振り向かずに銀に尋ねた。
「銀。 あの時アンバーは、お前に何を話した?」
俯いていた銀が呟く。「黒のこと。」
黒は銀を見た。 銀も、見えない瞳を真っ直ぐに黒へ向ける。
「黒の昔と、これからのこと…。」
じっと銀を見つめた黒は、ふと視線を逸らして心を決めると、静かに歩き出す。ホァンに投げ返される双眼鏡。
ホァンは思わず目を剥く。
「おい! 独りで行くつもりじゃねぇだろうな! いくらお前でも、今度ばかりは生きて帰れる保障もねぇ! マオのことは諦めろ。同じ状況なら、あいつはそう言う。」
「アンバーの目的は俺だ。 これ以上、誰も巻き込みたくない。」
決意を胸に秘めて、黒はEPRの本拠地へと向かう……。


パンドラの最深部。 つい先日まで博士の実験が行われていた設備の前で、セルゲイ主任がエリック西島に説明している。
「シュレーダー博士は、すでに計画に必要な構造式の解を得ていたようです。」
「つまり、シュレーダー博士はもはや必要ないと?」
うなずいてセルゲイは視線を投げる。 その先には、装置にセットされた【流星の欠片】に瓜二つのガラス状の円板。
「流星の欠片に代わるものを手に入れた、今となっては。」
無言でそれを見つめるエリック西島……。

「そんな計画はありえない!」 マオは語気を強める。
「残念ながら、あり得ちゃうんだな〜これが。まあ…南米では失敗したがね。」
「ヘヴンズ・ゲートを消失させたのは、あんたか?! 」
「う〜ん、我々が消したわけではないし、正確には『消失した』んじゃない。」
博士は立て板に水のごとく解説する。
「我々の計画が実行される直前に奇妙な発光現象があって、その直後、南米のヘヴンズ・ゲートの周囲1,500kmは、あらゆる物理的アプローチを一切拒絶する、【不可侵領域】になっちゃったんだよ!」
そこから漏れ出すランセルノプト反応や、対をなすヘルズ・ゲートの状態などから、いまだヘヴンズ・ゲートは存在していると思われるのだ。
博士たち研究者も手も足も出せない不可侵領域。 そもそも計算上は起こりえない現象なのだから、おそらくはそこに…アンバー達が関与して『何か』が引き起こされたはず。
その問いかけに、アンバーはにっこりと微笑む。 「うふ☆」

じっと聞き入っていたノーベンバーは、アンバーの方を向く。
「で、今度はその『何か』を東京でも引き起こすつもりなのか?」
「じゃないと私たち、今度は本当に消えることになるから。」
「…まるで、未来を見てきたかのような言い方だな。」
「うん、見てきた。」 無邪気な笑顔で応えるアンバー。 ノーベンバーは肩をすくめる。
「とても信じられない。」
「じゃ、証明する。」 「どうやって?」
アンバーは、ふとノーベンバーの顔を見つめた。

「あなたはここを出た後、…死ぬよ。」

衝撃的な宣告を告げられ、固まるノーベンバー。

一同を、沈黙が支配する……。


夜の帳が下りたビル群を見下ろし、ノーベンバーは無言で立ち尽くしていた。
ソファーから観察していた博士は、傍らで丸くなるマオを見る。
「なぁ、どう思う? 彼はどうやって死ぬんだろうか。」
「我々だって死を宣告されたようなものだ。 あの男に限ったことじゃない。」
「そりゃぁ困る! まだ実験の途中だ…!」
「契約者にとっちゃ幸いだ。 アンバーの言うことが本当なら、な。」
博士は肩を落とす。 「…なぁ、助けに来てくれるような仲間はいないのか?」
瞳を閉じたまま、マオは自分に言い聞かせるように呟いた。
「契約者は合理的な生き物だ。 死ぬと分かっていて飛び込んでくるような馬鹿な奴は、いない。 少なくとも、俺ならそうする…。」

だが。
その時、すでに黒は建物の中へと潜入していた。 ワイヤーガンを放ち、身軽に暗闇の中を上昇していく。
ドールの観測霊を使ってその様子を知ったアンバー達。
「どうする?」 ブリタに指示を求められ、アンバーは明るい声で語る。
「ここでは誰も死ぬ必要はない。」 「博士は?」 「組織はもう、彼を必要としていないもの。…分かった?」
頷き、ウェイが出て行く。
これから起きる事を見据えるような、暗い表情を見せるアンバー。


「ごめんね〜! 送ってもらっちゃって。」
未咲の愛車で、自宅代わりのホテルへと帰る途中のエイプリルとジュライ。
不意に、ジュライが呟いた。
「ノーベンバー…見つけた。」
ガバッと振り返るエイプリルと未咲。「どこ?!」
ジュライが見上げた先には、とある高層ビルが。 瞬く間に、下層階から順に照明が落とされていく。
赤色灯を点滅させ、未咲は急ハンドルを切った。

ノーベンバーや博士、マオのいる広いフロアも明かりが消えた。「なんだなんだ?!」
同時に、マオの水飲み用の入れ物から青白い観測霊が出現する。「銀…!!」
瞳孔を大きく開き、凝視するマオ。 「まさか……!!」
ノーベンバーの眼前のガラスにも、ジュライの観測霊が現れた。
《来たよ、助けに。》
ジュライの声が耳に響く。沈痛な面持ちでドアのほうを振り向くノーベンバー。

部屋を飛び出したマオは、暗闇の中を疾走してきた黒を発見。
「ヘイ!!!」
『…安心しろ。マオ。』
軽く頷き、黒は駆け寄ろうとする。 だが、ウェイがその前に立ち塞がった。
腕から流れる鮮血を黒へと飛ばす。 後ろへ飛び退りながら上体を捻ってかわすが、仮面の一部に血がかかってしまう。
落下しつつもワイヤーで身体を支えた黒。 ウェイの指が鳴り、仮面は音を立てて割れた。
「う…っっ!!」
床にもんどりうって体勢を立て直す。 割れた左目の部分から、黒の射抜くような視線が発せられた。
その時。 ピンクのポシェットに流星の欠片をしまったアンバーが、微笑みながら姿を現す。
アンバー…!!」
笑顔を変えないまま、アンバーは歩き出した。 黒が彼女を追って走り出すと、床面を破壊してウェイが飛び降りてくる。
「せっかくです。さっきの決着を付けるとしますか。」
「だめだめ。あなたの役目は足止めだけでしょ?」 能力を発動したブリタが割って入り、黒に襲いかかる。
キスで黒を転送しようと腕を伸ばすブリタ。 黒は大きく跳躍しながら彼女の腕を蹴り、電撃を発動。 間一髪で逃れたブリタはしゃがみ込んだ。
ワイヤーで身を躍らせウェイの攻撃を避けると、通路を駆けるアンバーの前へ着地する。
ハッとするアンバーの頭を右手で鷲掴みにし、黒は動きを封じた。

「お前の目的は何だ…! これ以上、俺から何を奪うつもりだ…っ!!」

「詳しいことは仲間の猫ちゃんに聞いて。 全部伝えたから。」

冷ややかに言い放つアンバー。
怒りに震える黒の瞳。 電撃を発動しようと身体に力をこめた瞬間、二人からランセルノプト放射光が立ち昇り始める。
いや、二人だけではない。
ブリタ、ウェイ、回廊をつなぐ手すり、マオ、さらには博士の体からも…ランセルノプト放射光が…。
「こ…これは!」 茫然と両手を見つめる博士。
黒とアンバーの立つ空間までもが青白く輝き始め、建物全体が鳴動を開始する。
アンバーのポシェットで眩く輝く【流星の欠片】。 それに呼応するかのように、黒の体から激しい発光が始まった。
無表情に見つめるアンバー。 怒りのままに彼女の頭部を掴む黒……。
「ヘイ!!!」 マオの絶叫が響く。

黒が白い光に包み込まれる、まさにその瞬間。

『 …おにいちゃん…!!』

妹・パイの呼び声が、黒を引き戻した。

ハッと目を見開く黒。 同時に、激しい発光は急速に消えていく。
ガクリと膝を折り、黒は床に右手を突いてしゃがみこんだ。
哀しげに見守るアンバー。 こうなることを、彼女は知っていた…。

全館の照明が復旧し、マオの瞳孔がギュッと細くなる。
黒を見つめていたノーベンバーは、いつもの飄々とした口調で語り始めた。
「我々はどうあっても、この物語の中では主役になれないらしい。 後はよろしく頼むよ、猫ちゃん。」
吹っ切れた中にも、どこか寂しさをにじませたノーベンバーの表情。 踵を返し、出口へと向かう。
「んん…?」
彼はEPRに加わるのではと予想していたマオは、訝しげに見送る。
ハッとした時には、すでにアンバー達の姿は掻き消えていた。黒だけがまだ床に手を突いてうなだれている。
急いで駆け寄ろうとしたマオだったが、銃を構えた未咲達が踏み込んできてしまう。

「動くな! 腹ばいになり、ゆっくりと両手を床に付けろ!」
黒が上体を起こし、仮面の割れ目から未咲を見る。
「早く! …ハッ…?」
この青年……どこかで見た記憶のある瞳、髪型。
未咲は銃を構えたまま、ジリジリと近づいていく。
あと少しのところまで来た時、ふいにエイプリルが未咲の腕を掴んだ。
同時に、ホァンが閃光弾を発射。周囲は目を射る眩しい光に包まれる。

光が消えたとき、すでにそこには黒の姿はなかった……。


シュレーダー博士を救出した未咲達の前に、エリック西島と宝来部長が現れた。
それまで茫然と震えていた博士は、パッと顔を輝かせる。
「分かったぞ! 南米があんなことになった原因だ。 仮面の契約者だよ! あの男の力のせいだったんだよ!!」
発見した真理を、嬉しそうに語る博士。 「早く実験を再開しよう、彼らに先を越されては…!」
苦笑しながら見守っていたエリックが口を開いた。「博士、実験は既に再開しています。」 「はぁ…?」
突然、エリックは博士の首に鎮静剤を打ち込む。 博士の言葉に耳を傾けていた未咲は飛び上がった。
「博士をパンドラへ移送してください。」 「しかし、まだ博士にはお聞きしたいことが!」 「我々もです。では、宜しく。」
未咲は宝来を振り返った。「部長!!」
しかし、宝来の対応は意外なもの。「仕方ないだろう。従うしかあるまい。」
うつむき、唇をかむ未咲。

MI6の極東支部。 窓のそばの広いデスクで、ディケイドは誰かと携帯電話で会話を交わしていた。
「そうか。博士は彼らに全てを話したか。 確かに君の言うように、計画を次の大黒斑周期まで延期するのは危険なようだ。…分かってる。あの男の処分に関しては、彼が手を打ってくれた。 では。」
電話を切ってデスクのウィスキーグラスに手を伸ばすと、……すでにそれは凍結している。
愕然と眼を上げた先には、ノーベンバー11が微笑んでいた。
「今までどこにいた?!」 「任務を遂行していました。」デスクに分厚いファイルが置かれる。 「それは?」
「例の組織について調べていました。 貴方はただ、恐れていただけだったんですね。 私が貴方がたの秘密に辿り着くことを。」
銃を構えた警備要員がノーベンバーを取り囲む。
「恐れていたのは、最高の部下を失うことの方だよ。 君にだけは知られたくなかった。 君達契約者に訪れる、最期の瞬間まで…。 残念だ。」
ノーベンバーは…痛みを堪えるような笑顔を浮かべる。
「私もです。」
その手に握られたのは、ウィスキーのボトル……。


『発信音の後に、15秒以内で伝言をどうぞ』
紫煙をくゆらせながら体を揺らし、夜のビル街を歩くノーベンバー。
「…私だ…。 黙って逝くつもりだったが、君達にまで危険が及ぶ状況を作ってしまったようだ。 言っとくが、これは冗談じゃな……」
伝言時間の終了を告げる無情な音。 眉間にシワを寄せ、ノーベンバーは立ち止まる。 哀しげに携帯電話を見つめると、不意に咳き込んだ。
左手を染める鮮血。 そっと微笑み、携帯電話を取り落とす。
膝を突き、ゆっくりと仰向けに横たわる。
「最期まで律儀に対価を払う必要もないか……」そっと呟き、煙草を指で弾く。
その小さな火は、流れ出る鮮血の中で消えていく。


裏切り続けた上司達への復讐を遂げ、ノーベンバーは人生の幕を閉じた。


「なぜなんでしょう。なぜ彼は…こうしなければならなかったんでしょう…。なぜ…こんな……」
ノーベンバーが息を引き取った現場を訪れたエイプリルたち。 未咲の瞳から大粒の涙がこぼれ落ちる。
「それ以上は口を挟まないほうがいい。 そう思ったから、あの男はあんたに何も言わずに死んでいったんだ。 契約者らしい、合理的判断ってやつでね。」
穏やかに語るエイプリル。
「あんたの気持ちは素直に嬉しいよ。 ありがとう。未咲。」
ジュライの手を引いて歩き出す。ジュライは静かに振り返り、見送る未咲に左手を上げてみせた。
《 バイバイ。未咲。》


いつもの昼下がりの公園。 ベンチに座る黒に、マオは問いかける。
「どうして助けに来た? あの場での最善の策は……」
「お前を見殺しにすることだ。 契約者の合理的判断ってやつがなくても、分かるさ。 それくらいのことはな。」
機嫌よく気持ち良さそうに煙草を吸うホァン。 マオはうなだれる。
「バカだな……お前ら。」
「バカはこいつ一人だ。」
ホァンはジョークのように、軽く黒を示す。

じっと黒を見つめるマオ。 その視線に応えて、優しく微笑む黒。
4人の間を、温かなものが包みこむ。

フッと笑い、ホァンが再び煙草をくわえようとすると、おもむろに黒が口を開いた。
「それより何だ。 急用って。」
「ああ、 MI6の伊達男が死んだ。」
マオは愕然としてホァンを見上げる。 「ホントか?! 」 「上司と数人の手下を道連れにしてな。」
ホァンの訊問が始まる。 「組織のことだ。あの場にマオがいた、と嗅ぎ付けるのも時間の問題だ。 だから、その前に知っておきてぇ。 あの場で何があった?」
けれど、マオの答えは別のものだった。
「あの男、死ぬ事が分かっていて…。 どうやら、俺が生き残ったことには理由があるらしい。」
顔を上げて黒を見る。 「アンバーから聞いた話だ。」
静かに耳を傾けていた黒の表情が一変し、怒りが露わになる。
「組織は、俺達契約者全てをこの世から消し去るつもりだ。」 「なに?!」
「アンバー達はそれに抗ってる。5年前、南米ゲートを消したのもそのためだ。」 「ちょっと待て、お前なに言ってんだ?! 」
驚くホァンだったが、激しい物音にギョッとして黒を見た。 握りこぶしでベンチを壊し、震える黒の手。
「ちがう…っ!! あいつのやることに、大義名分なんか無い!! あいつは、ただ…ただ……!」
「あの人は、そんな人じゃない。」
静かな銀の声。 黒は目を見開いて銀を見た。 見えない瞳をひたと黒に据える銀。
黒の顔が怒りに歪み、足音も荒々しくその場を後にする。
「おい…! 何なんだよ一体!」
取り残された格好のホァン。 銀は、黒の後ろ姿を黙って見送った。




黒の前から静かに去っていった、一人の男。

彼は、黒から受け止めた影響を『組織への復讐』として形に残し、自分の運命と向き合った……。




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ノーベンバー……。


彼はEPRに身をおくことを、最後まで拒んだのですね。

自分の延命を図るよりも、目の前の裏切りに対して復讐する。

彼らしいかもしれない…。


契約者らしくと語りながら、もっとも契約者からは遠い選択をしたノーベンバー。

そこには、『こんな時に黒ならどう行動するだろう?』と考えていた彼なりの思いがあったのでしょうね。

仲間であるエイプリルとジュライを裏切りたくない。

彼らとは最後まで仲間でありたい。

そんなひたむきさが感じられて……切ない……


彼の心が、穏やかな休息を得られたことを祈っています。




「もう誰も巻き込みたくない。」

「これ以上俺から何を奪うつもりだ?!」


悲痛な黒の叫び。

黒は…さまざまな人との別離を体験してきている。

彼らの笑顔、声、しぐさ。

そういったものが、黒の前から永遠に消えてしまう。

もう、誰も失いたくないよね…黒…。




黒たちの組織。 パンドラ。 公安。

どこがどうつながっているのか。

アンバーには分かっているのかもしれないけれど、黒や未咲はまだ全体図が見えてきていないと思うのです。

それに気づく時は来るのか。

気づいた時に、どう行動するのか。

厳しい選択になりそう……。



黒の暴走を止めた妹の声。

よかった…!! やはりずっと黒を見守っていたんですね。

すぐ、そばで。

そばと言うよりも……


再会はできるのだろうか。 会わせてあげたい。



あと残すところ3話!


もっともっと観ていたい……!!!









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風庫~カゼクラ~
2007/09/10 21:33
DARKER THAN BLACK -黒の契約者- 第22話
      「粛正の街は涙に濡れて・・・(後編)」 ...続きを見る
ミルクレモンティー
2007/09/10 21:59
黒の契約者 第22話「粛清の街は涙に濡れて…(後編)」(感想)
こちらは感想です。内容は前半・後半。上手く感想がまとまりません。思いついた時に随時追加・訂正させていただきます。アバンは緊迫した中にも必死の猫の形相が楽しかったり、ノーベンバーさんの堂々とした露な姿に驚いたのですが・・・まさか、ノーベンバーさんの最期の... ...続きを見る
からまつそう
2007/09/10 22:00
Darker than BLACK -黒の契約者-「粛正の街は涙に濡れて…(後編)」
Darker than BLACK -黒の契約者-「粛正の街は涙に濡れて…(後編)」 ...続きを見る
藍麦のああなんだかなぁ
2007/09/10 22:56
darker than BLACK 第22話 感想
 色々とクライマックスへ!!   ...続きを見る
荒野の出来事
2007/09/10 23:08
DARKERTHANBLACK・黒の契約者 #22 「粛正の街は涙に濡れて…後...
DARKERTHANBLACK・黒の契約者 #22「粛正の街は涙に濡れて…後編」「最後まで律儀に対価を払う必要もないか」投げ捨てた煙草、その火を消す血。猫が気がつくと、裸のノーベンバーがいる。その部屋にアンバー、ウェイ、ブリタが入ってくる。この状況に猫が取るべき最善の行... ...続きを見る
よろず屋の猫
2007/09/10 23:15
[アニメ][DARKER THAN BLACK]『DARKER THAN BLACK -黒の契約者-...
 アンバーに捕まった猫。彼を助けるために、黒は単身イブニング・プリム・ローズの拠点であるビルに侵入する。一方、猫、そしてノーベンバー11は、アンバーの口から南米天国門消失の真実と未来を聞かされる。  三十分間、息詰めっぱなし! 物語としての『ダーカー』の力 ...続きを見る
なにぬね〜独り言でもつらつらと〜
2007/09/10 23:21
DARKER THAN BLACK 黒の契約者第22話「粛正の街は涙に濡れて…後編」
 ダーカーもついに今回限りで前・後編の構成が終わり、次回からはラストに向けて一直線。残された謎は最終回までにどこまで解けてくるのでしょうか。そして白の登場は? ...続きを見る
アンカー教授のたわごと
2007/09/10 23:23
DTB22〜黒猫の契約者2
また、やるんか? ちなみに、前回の「DARKER THAN BLACK CAT-黒猫の契約者-」は、こちら。  あれ? 俺、そういやぁ、あのとき、アンバーとかいう女に会って。。。それからどうしたんだ ...続きを見る
夢見る不惑☆星
2007/09/10 23:38
DARKER THAN BLACK -黒の契約者- 第22話 「粛正の街は涙に濡れて…後編」
DARKER THAN BLACK 黒の契約者   現時点での評価:3.0〜   [アクション]   MBS : 04/05 25:25〜  中国放送 : 04/07 26:40〜   CBC : 04/05 26:55〜  熊本放送 : 04/08 26:30〜   北海道放送 : 04/05 26:10〜  山陽放送 : 04/09 26:25〜   TBS :... ...続きを見る
アニメって本当に面白いですね。
2007/09/11 00:59
DARKER THAN BLACK 第22話 「粛正の街は涙に濡れて...後編」
目が覚めるとそこにはアッー! いくら冷静な契約者でもこれは確実に取り乱すw ...続きを見る
アニメが好きなのよ
2007/09/11 23:56
DARKERTHANBLACK-黒の契約者-第22話「粛正の街は涙に濡れて…(後...
黒の契約者。今更かよ!って気もしますが、今期金曜深夜はこのアニメしか見てないんですね〜。よって土曜に書く記事もこれしかないわけで。あっ、でも夜に地球へがあるか…まぁ要は冒頭に書くネタないけどなんか書きたい気分だったから適当に書いてみただけです。ちなみに... ...続きを見る
物書きチャリダー日記
2007/09/12 19:46
そして、黒いコートの男はいなくなった/『Darker Than Black−黒の契約者−』/第22話...
「それ以上は口を挟まない方が良い、そう思ったからあの男はあんたに何も言わずに、死んでったんだ。契約者らしい合理的判断ってやつでね……。あんたの気持ちは素直に嬉しいよ。ありがとう、ミサキ」(エイプリル) ...続きを見る
サブカル・カムカム
2007/09/12 21:58
DARKERTHANBLACK黒の契約者#22さようなら、私のジャック・サイモン
ノ・・ノーベンバーが........(;д;)ノーベンバーが・・。・゚゚・(&gt;_&lt;;)・゚゚・。。ノーベンバーがぁぁぁぁぁああああ゜゚゚・(ノД`)ノ・゚・ウェェェェェェン第22話「粛正の街は涙に濡れて…後編」公式HPよりあらすじノーベンバーの行方を捜査するMI6によ... ...続きを見る
帰ってきた二次元に愛をこめて☆
2007/09/13 00:55
レビュー・評価:Darker than BLACK 黒の契約者/第22話 「粛正の街は涙に濡れて…後...
品質評価 21 / 萌え評価 26 / 燃え評価 8 / ギャグ評価 7 / シリアス評価 58 / お色気評価 59 / 総合評価 30レビュー数 138 件 ...続きを見る
ANIMA-LIGHT:アニメ・マンガ・...
2007/09/14 22:50

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