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zoom RSS 『黒の契約者』第24話「流星雨」〜感想〜

<<   作成日時 : 2007/09/23 23:58   >>

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「タバコは止めておけ。」「お前こそ食いすぎるなよ。」 「面白かったよ…お前らと一緒にいると…」
『DARKER THAN BLACK -黒の契約者-』第24話。静かに去りゆく者。ひたすらにゲートを目指す者。それぞれの思いが輝きを放つ。黒(ヘイ)の胸に鮮やかな笑顔を残して……。



「どこか田舎に引っ込んで、釣りでもしようかと思ってる…。」
「釣り?」
トンネル内を走るホァンの愛車。 思いがけない穏やかなホァンの呟きに、後部座席の黒が聞き返した。
「昔はよく行ったもんだ。 俺はヘラ専門でよ。」
「確かに、ヘラ鮒みたいな面はしてるな。」 「うるせぇ! 」
マオのとぼけた突っ込みにもめげず、ホァンは語り続ける。
「流れる水を見てると時間を忘れちまうんだ。 俺たちの人生なんざ、川を流れる木の葉みたいなもんだが…」
「へっくしゅ!! 」
珍しくしみじみと述懐していたのに、マオのくしゃみで台無しに。
「おい、今いいこと言ってたんだぞ! 」 「ああ、すまん☆」
助手席に座るウェイも、静かに会話を聞いている。

路肩へと停車し、ホァンに別れを告げる時が来た。
機嫌よくタバコをくわえたホァンは、微笑みながら指を近づける黒に気づく。
「ん? なんだ、火でも付けてくれんのか?」
期待しながら顔を向けて待つと、黒の瞳孔が紅く輝き、タバコの先が一瞬で吹き飛んでしまう。
「うぉぉっ?! 何しやがる?!!」
「タバコはやめておけ。」
黒の体を気遣う、黒の温かな笑顔。 家族を見守るような優しいまなざし。
「…お前こそ、食いすぎるなよ。」
ホァンも汗を浮かべながら黒を見る。
黒が体を引くと、次いで銀が身を乗り出し、ホァンの首に腕を回してギュっと抱きしめた。
「お、おいっ!? 」
突然の抱擁に真っ赤になるホァン。 後ろでは黒が微笑んで見つめている。
銀は切なそうに手に力を込め、やがてそっと体を引く。
「コホン!……。 じゃぁな。」
咳払いをしたホァンは、いつもの不敵な笑顔でポーズを決め、車を発進させた。
黒いワゴンが見る見るうちに遠ざかっていく。 無言で見送る黒たち4人。

トンネルを抜けたホァンは、甲州街道を東へ疾走。 だが上空では組織側のヘリが追跡し、包囲網は着実に迫っている。
追手を引きつけるため急ハンドルを切って右へ逸れ、さらに加速していく。
「…しっかり付いて来いよ…!」
銃弾を受け、血のにじむ腹部を押さえながら……。

『さあ、いよいよ始まるね 始まり始まり 終りのはじまり-----』

星見様の静かな声が観測室に響く。


未咲はただ一人パンドラ内部へと乗り込んだ。 目的はシュレーダー博士に面会し、話を聞くこと。
女性職員による厳しい身体検査を受け、ポケットに忍ばせたICレコーダーまで取り上げられてしまう。
ようやく通された部屋には、なぜかエリック西島も当たり前のように座っている。
「…私はシュレーダー博士に面会を求めたはずですが。」
「私としても二人っきりの方が嬉しいんだけど、この男が『どうしても』ってね。」
博士が肩をすくめて見せると、エリックは鋭い視線のまま口元に笑みを浮かべた。
「貴女とは一度お話をしたいと思っていたものですから。 残念ながら時間がない。 手早く説明させていただく。 どうぞお座りください。」
モニターに南米大陸の全体図が映し出され、博士がいそいそとソファに腰を下ろす。

5年前に南米で起きた〔物理的不可侵領域の発生〕。 これにより、人類は永久にヘヴンズ・ゲートにアクセスする手段を失っている。
広大な空間と数億の人々は、永遠に手の届かない存在になってしまったのだ。
「その状況を作り出したのが…BK201。 彼はなぜ南米の惨劇を引き起こしたのです? 」
博士が驚いた表情でこちらを向いた。
「彼? 違うよ。 その当時のメシエコードBK201は、別の女性を示すナンバーだったはずだ。」
事態が飲み込めず、未咲は博士の顔を見つめる。 「なんですって?!」
「過去の事象より今は現状を理解していただきたい。 EPRは今この東京で、南米と同じ現象を起こそうとしているのです。」
温度を含まないエリックの声。 未咲は疑問をぶつけた。 「その情報は一体どこから?」
エリックの表情が冷やかな笑みに代わる。
「我々はずっと彼らと戦ってきたのです。 知らないわけがない。」

『東京エクスプロージョン』
エリックたちがそう呼ぶ現象が南米と同じ規模で起きた場合、日本列島は全て不可侵領域に飲み込まれ、あらゆる存在が虚空に消えることになる。
「しかし、安心してください。 こんな事態は起こさせません。」
「どうやって止めるのです?」
「ヘルズ・ゲートを対消滅させるんだよ。」
朗らかな博士の言葉に、未咲は息をのむ。 「そんなことが可能なのですか?!」
ゲートを取り囲む壁は侵入者を防ぐためだけのものではない。 【あるモノ】を守るための堅牢な要塞でもある。
「…これは?」 「サターン・システムです。」
モニターに釘付けになる未咲。 その視線の先に、巨大な円形の粒子加速器が姿を現した……。


夜の新宿。 『パフェはじめました』の張り紙を出したラーメン屋の屋台で、斎藤と河野はヤケ食い中。
かつて黒と舞が食欲を競った屋台では、今夜、霧原課長を心配する刑事二人の哀愁が漂う。
「課長…、なんかヤバイことに首突っ込んじまってるんじゃないっすか?」
河野の弱気な様子に対し、斎藤は丼の汁を一気飲みして力を込める。
「俺は課長を信じる!」
「よく言うよ、尾行しといて…」 斎藤に聞こえないようボソッと呟く河野のツッコミ。
そこへ斎藤の携帯が鳴り響いた。 外事4課に残っている松本刑事からの緊急連絡だ。
「なんですって?! 河野、パンドラへ行くぞ! 課長がいるんだよ、そこに!」
だが、二人が屋台を離れてすぐに特殊車両と鉢合わせしてしまう。 数え切れないほどの特車が列を成している。
「くそっ! 一体何が起きてるんだ…?!」
何も知らされていない二人は、動きが取れない。

その頃。
未咲の前では、シュレーダー博士の流暢な説明が続いていた。
「大黒班は発生から45日目に面積を最大とする最終段階を迎え、約30分、その状態を維持する。 その30分の間に、このサターン・リングで生成、加速した反ゲート粒子をヘルズゲート中心核に撃ち込めば…! 」
「ゲートは対消滅する…。」
「ちなみに、BK201が東京エクスプロージョンを起こせるのも、この最終段階に限られておる。」
「え…っ?!」
驚く未咲。 エリックがキーボードを打つ手を止め、顔を上げた。 「我々が南米で得た、膨大な知識と教訓の一つですよ。」
「面白いだろう? この30分を巡って、人類と契約者の戦いが繰り広げられてきたんだよ!」
博士は和洋折衷の懐中時計を取り出した。 現在の時刻は深夜1時43分。
「世紀の瞬間まで、あと5時間27分!」
エリックの手元に報告が入る。 「どうした? 」 『北区本町2丁目で特隊が交戦状態に入りました』 「分かった。」
博士が嬉しそうに叫ぶ。 「おおっ、始まりおったね!」
同時に、エリックの背後でシャッターが上がり、対策本部の全容が目の前に展開した。
夥しい数のモニター。 そこには、天文部で収集したデータが逐一映し出されている。
今までずっとそうしていたかのように、それらを注視するパンドラ職員たち。
「これは…!」
愕然とする未咲。

ゲートの付近で繰り広げられる激しい戦闘。 アンバーの指令を受けた契約者たちはチームを組み、縦横無尽に駆ける。

『急いだ 急いだ 星さまたちよ 光って 泣いて 流れて 消えて --------』

星見様が言葉を紡ぐ。

すでに板橋区から北区にかけて無数の契約者が入り乱れ、激しく闘っていた。


ウェイに導かれ、廃線となった地下鉄の線路へと入る黒たち。
「なるほど、聞いたことがある。 公式には存在しないことになってる地下鉄があるってな。」
マオが頷き、ウェイは線路へと飛び降りた。 この地下鉄に関する資料はすでに失われているため、今では警備もされていないという。
「おい、歩いていくのか?」 「電気は止められています。 その代り、警察の観測霊も侵入できないというわけです。」
黒が先に飛び降り、両腕を広げて声をかける。 「銀。」
その声に応えて銀が線路へと降り、3人は歩きだした。
「やれやれ…」 マオも仕方なく飛び降りると、後を追って進む。


『きらきら ぴかぴか 星さまよ 天の波間にきらめいて 流れ流され どこへ行く だぁれも知らない 暗い穴 -------』

言葉を紡ぐ星見様の眉が悲しげにひそめられ、契約者たちの星が次々と流れ落ちていく。


ゲートを間近に眺めるマンションの一室で、対価のゆで卵を作る雨霧。 戦闘の音がここまで響いてくる。
「始まったな。」
窓からゲートを眺めていたアンバーが振り返り、微笑んだ。 肩に下げているのは【流星の欠片】を入れたポシェット。
「うん…。 じゃ、後は予定通りに。」
静かに部屋を出て行こうとする彼女に、雨霧がふと声をかける。
「アンバー、…」 「ん?」
振り向いて笑顔で見つめるが、雨霧は黙り込んでしまう。
「ん?」 促すように微笑み、首をかしげるアンバー。
彼女に最後の別れの言葉を言わなければならない。 けれど…
「卵、要るか?」
「ちょうだい。」
すぐそこまで迫る最終局面を感じさせない、アンバーの明るい声。


ウェイに導かれた黒たち一行の前に、分厚いコンクリートの壁が立ちはだかった。
「ここが壁の真下か。 すんなりとは通してくれないみたいだな。 どうする? 」
マオが尋ねると、挑戦的な笑みを浮かべてウェイはナイフを取り出した。
「こうします! 」
ハッとして体を引き、身構える黒。
すかさず大量の血を投げつけられ、横へ回転して避ける。
「何のつもりだ?! 」
「アンバーとの約束は、貴方をここまで案内すること。 その後は好きにしていいという条件で。」
指を鳴らす音とともに背後の柱が破壊され、黒は横ざまへ大きく飛びのいた。
「私は貴方ともう一度戦うために、アンバーと行動を共にしていたのです。 EPRに居ればいずれ貴方に会えると思って。 この力を手に入れてから、他人に負けることなどあり得なかった。 …その屈辱、貴方に分かりますか? 」
「…いや。」
「でしょうね!」 ウェイの顔が歪む。
同時に走り出す二人。 黒がナイフを放ち、ウェイの血が炸裂する。
見守るマオは苦々しげに唸った。 「屈辱だと? 面白いことを言うじゃないか。契約者のくせに。」
一瞬の隙を見てワイヤーを天井へ向けて投擲する黒。 ウェイは気付かず、そのまま黒が身を隠した柱へ血を放つ。
指の鳴る音とともに柱が激しく倒壊。 会心の笑みを浮かべるが……
ワイヤーに掴まり、黒がウェイに向かって真っ直ぐに身を躍らせた。


「ヘヴンズ・ゲートとヘルズ・ゲートは、表裏一体なんだ。 片方を塞いでしまえば、もう片方も消える。」
テーブルに置かれたコーヒーには手をつけず、未咲はシュレーダー博士の解説にじっと聞き入っていた。
「ゲートが無くなると、契約者はどうなるのですか? 」
真剣に尋ねる未咲。 博士は事もなげに答える。
「全員溶けて消える。 この砂糖のように。」
「…そんな! 本当なのですか、それは?! 」
「ホントだよ。 実験したんだ。」
未咲の怒りはついに頂点に達した。
「馬鹿な! 貴方がたは一体…! 契約者といえど人間です!! その全てが犯罪者というわけではない!」
「では、数千人の契約者のために、数億の人間を犠牲にしろと言うのですか? 」
エリックの冷やかな声を聞き、未咲は歯を食いしばる。
同時に、公安部長・宝来の低い声が響き渡った。
「ヒューマニズムを口にするのはたやすいが、現実を見落として国民を危険に晒すのは、警察官として許されざる行為だとは思わんか? 霧原。」
「部長…!」
「私の部下が失礼した。 ミスター西島。」
「いえ、なかなか楽しいひと時でした。 後は任せます。 最後の詰めが待ってますので。」
エリックは博士を伴って部屋を出ていく。 残された未咲は立ちすくんだ。

「サターン・リングの発動は、我々にとっても苦渋の決断なのだよ。」
背を向けたまま、宝来は語り始める。
「…貴方も、向こう側の人間だったというわけですか…! 」
未咲の鋭い問いかけ。 握りしめた拳が震える。
国連管理下の一研究機関に過ぎないパンドラに、数億の人命を左右するような作戦を単独で実行する権限はない。
よほど巨大な力が、国家の枠組みをも超えた意思がなければ、今まで隠し通すことなどできなかったはず。
「ノーベンバー11が追っていたのは、そんな途方もない力を持つ組織だったのですね…!! 」
苦い思いを噛みしめる未咲に、追い討ちが掛けられる。
「そして気付いてないかもしれないが、君もすでに組織の一部として組み込まれている。」
「私が?! 馬鹿なっ…!」
「あらゆる国の諜報機関、政府、権力者に組織の手は及んでいる。 世界の秩序を守るために。」
その宝来の言葉に、未咲はハッと顔を上げる。
「…もしや…BK201も? 」
「BK201、コードネーム『黒(ヘイ)』。 彼も組織の人間だ。 もっとも、今は姿をくらましてしまったがね。」
未咲は大きく息をのむ。 「姿をくらました…? 」
眉を寄せ、じっと考え込んだ後、強い視線を宝来に向けた。
「どうして今さら真実を話したのですか? 私もノーベンバーのように…」
「殺すのは簡単だ。 だが、我々は常に優秀な人間を欲している。 君のようなね。」

《 そんな…! 私は組織に利用されるために生かされているのか……》
未咲の中を衝撃が駆け抜ける。

黒のナイフによってにとどめを刺されたウェイ。 もう動く力すら残っていない。
背中を預ける壁には、まるで十字架のように鮮血が飛び散っている。
やがて、ウェイの口から笑い声が漏れた。
「…何が可笑しい? 」
厳しい口調で黒が問うと、ウェイは自嘲気味に呟く。
「やはり、こうなるか…」
「どういうことだ?! 」
「俺がお前を殺してしまうようでは…、道案内などさせるはずがない……」
マオは驚いて声を上げる。 「お前、最初から負けると判っていて…? 」
「…結果が分かっていても、戦わずにはいられなかった……」
「契約者には考えられない、非合理的な行動だな。」
「お前のせいだ…お前に会ったお陰で……! 」
黒に出会ったために、自分の感情に正直に生きようとしたウェイ。
マオはそっと語りかける。 「変な野郎だよ、お前も。」
「ああ…! 」 ウェイが微笑む。 「行け、BK201…!」
ウェイの左指が鳴らされ、最後の壁は彼を巻き込んで大音響とともに崩壊していく。
その最期を、辛そうに見守る黒……。

黒たち3人の前に、壁の奥へと続く暗闇が出現した。


組織の追跡を引きつけながら、埠頭へと激走するホァンの車。
夜空では絶えず契約者の星が流れ続けている。
ついに敵の車に体当たりで止められ、機関銃を構えた男達がドアを開けた。
ハンドルに突っ伏し、苦しげに肩で息をするホァン。 大量の出血に染まる服とシート。
「悪いな…。 親父一人しか…いなくてよ…」
助手席の前には強力な爆薬が6本据えられ、タイマーにセットされた時計の針が時を刻む。
気づいた男達は蜘蛛の子を散らすように逃げ去った。
荒い息をつきながらシートにもたれると、ホァンは霞む目を凝らして夜空を見上げる。
今また二つの星が流れていく…。
いつものように浮かべる不敵な笑み。

《 誰の星だか知らないが、待ってろよ。 俺もお前達の仲間入りをさせてもらうぜ… 》

レインボーブリッジのすぐ近く。 ホァンの車が大爆発する。

黒たちを庇って、彼は命を散らした……。


ブリタとともにサターン・リングの設置場所へと転移した雨霧は、思わぬ事態に直面した。
上方からこちらを見守る、組織側の契約者の少女。 その能力で発火するブリタと自分。
…だが、一瞬の後に気づくと…まだ何も起きていない。その一方、空のはずのポケットに先ほどのゆで卵が入っている。
「アンバーか…。」
雨霧の危機を察知したアンバーが時間を巻き戻し、その証として卵を託していったのだ。
サターン・リングの前まで来ると、雨霧は無言で腕を伸ばし能力を発動した。
標的は、先ほどの予知夢で見た少女・舞。 不意討ちは成功し、舞は体勢を崩す。
その隙にサターン・リングに向けて次々に波動を撃ち込む。
「よし、リングは破壊した!」
しかし、その言葉の終らぬうちに雨霧は炎に包まれる。 必死に柵に掴まり、反撃する舞。
リングから激しい水蒸気が噴き出し、通路上の舞をも飲み込んでいく……。

ゲートのすぐ傍に停車した大型トラック内に、炎から辛うじて脱出したブリタが現れた。
二段にずらりと並べられたドールのカプセル。 契約者の仲間たちが周囲の状況を確認している。
「ブリタ!! …リングは? 」 「破壊した。 状況は? 」
「攻撃に参加していたメンバーはほぼ全滅。生き残りも敗走を始めている。」
「そう…。」 「雨霧は?」 仲間の問いかけに、ブリタは力無く首を振った。
同時に、ゲートの中から再び反ゲート粒子の反応が発生。
「裏をかいていたのは、私たちだけじゃないってことか…。」ブリタは悄然と呟き、ドールたちを見上げる。
「後は、この子たちとアンバーに期待するしかない。」

雨霧の破壊したリングは『囮』(おとり)に過ぎなかったのだ。
パンドラ内では、すでにもう一基のリングが稼働を開始していた。
「そうか、ジュピター・リングは予備なんぞ用意してなかったから、南米の時は痛い目を見た。えらい! えらいよ君は!」
グッジョブ!と喜ぶシュレーダー博士に、エリックはまんざらでもない様子で微かに笑う。

ゲート内の荒廃した公園へと足を運んだ黒たち。
戦闘の音が聞こえる外部の方角を、黒は寂しげに見守る。
不意に、アスファルトの道路から観測霊が出現した。
「…呼んでる。」
真っ直ぐ観測霊に向かって歩き出した銀を、マオは心配して止めようとする。
「まて、銀! むやみに動くと…!」
その銀は「…あっち。」との言葉を残して突然姿を消す。 まるで別の空間へ飲み込まれたかのように。
様子を見つめていた黒も、銀の後に従った。
「ええい、どうにでもなれっ!」
脂汗を流しながらマオも飛び込む。
そこは、重力が不思議な作用を及ぼす空間。 3人は高層ビルの壁や窓の上を、地面と水平に歩くことに。
「これがゲートか。 面白いじゃないか…!! 」
ヤケになって黒と銀に続くマオ。 頭上では絶えず契約者の星が流れ続ける。


『急いで渡れや 三途の河原 されど星さま 迷わぬように 案内する子と はぐれぬように -------』


星見様の言葉を裏付けるように、黒たちを導く大勢のドールの観測霊。
天文部の収集したデータから、ついにシュレーダー博士が気づいた。
「そうか!! 連中、ドールを使ったな?! 」

「痛て!」
銀に抱えられたマオが小さく悲鳴を上げる。
「どうした?」
「パンドラのサーバーに侵入して昔の論文を漁ってたんだが、切られちまった。 でも、面白い論文を見つけたぞ。」
ドール単体では何を媒介にしようとも、観測霊をゲートの奥に侵入させるにはかなりの苦痛を伴う。
だが、大量のドールをリンクさせ、【流星の欠片】で能力を増幅させるシステムを作れば、ゲートの中心近くまで観測霊を侵入させられるのだ。
暗闇の中を進む黒たちの前に、まるで篝火のように観測霊がたたずみ、道案内を務めている……。

やがて、マオが静かに語りだした。 ひたひたと近付く別れの時。
「餌はカリカリじゃない方が好きなんだ…」
「ん?」
異変を感じた黒が足を止めると、ぼんやりとしたマオの声が続く。
「面白かったよ…お前らと一緒にいると…」
「マオ?! 」
「いつか…俺にそっくりな猫が…お前らを訪ねていったら……」

不意にマオが暴れだし、銀の左指を噛んで地面へ飛び降りた。
猫の本能のままに一目散に駆け去っていく。
組織から切り捨てられた時、いつかはこうなると覚悟していたはずなのに。 こんなにも別れは突然に来てしまう…。
哀しげに傷を口に含む銀。

黒は、マオの後ろ姿を茫然と見送ることしかできない……。

切なさが黒の胸を締めつける。


『星の数だけ命は消えて すべて流れていなくなる どこへ行かれる? 流れた星よ 私を置いて 逝かんでおくれ --------』

星見様の悲痛な叫びが響く。


言問橋(ことといばし)の上を渡る銀と黒。 二人を導いていた観測霊が突然消滅した。
ドールとともにブリタ達が隠れていたトラックを始め、ドールの各拠点が襲撃されたのだ。
「これで連中は道しるべを失った。 もはやゲートの中心に至ることも、外に出てくることもできん!」
勝ち誇る博士。 エリックも勝利を確信する。
「我々の勝ちだ…!」


『だぁれもいない暗い空 大きな大きな華ひとつ ぴかり光って その先は どっちもどっちも ---------』

星見様が不意に笑い始めた。 聞きなれない甲高い声がこだまする。


じっと意識を研ぎ澄ませていた銀が目を見開く。
「どうした? 銀。 銀!」
銀はためらわずに橋の欄干に上がり、川面へ飛び降りた。 そして右手の方向を指さす。
「あっち。」
その姿を見て穏やかに微笑み、黒も川へと飛び降りる。
浅い水底に立って黒が頷くと、銀は先に立って歩き出した。

川霧の立ち込める中、二人の姿を太陽が照らす。 その表面を覆う大黒班。
だが、朝の光はあくまでも優しく、静かだ。

最終局面は午前7時10分。 もうあと少し。


ふと、黒が何かに気づいて視線を集中させる。
その先には…


幼い童女の姿になった…アンバー。




*:・'゜☆。.:*:・'゜☆゜':*:。.:*:゜'・:*・'゜☆。.:*・'゜*:・'゜☆。.:*:・'゜☆゜':*:。.:*:゜'・:*・'゜☆。.:*・'゜



ホァン……!!!!


こんな形で命を落とすことになるとは。

彼らしいけれど…もっともっと生きてほしかった…!


致命傷を受けた時点で、ホァンは覚悟していたのでしょうね。

病院に担ぎ込まれたところで、組織が手を回せば助かる見込みはない。

《 ならば、黒たちの代わりに追っ手を引きつけてやろう。》

そんなホァンの気持ちが切ない…。



別れの挨拶を告げた時、銀はホァンとはもう会えないと覚悟していた様子でした。

一方、黒は『またどこかでホァンとは会える』と信じていたんじゃないかな。
ここまでチームを引っ張ってきたホァンが死ぬはずはない、と。

「タバコはやめておけ。」

あの優しさ全開の黒のほほ笑みは、永遠の別れというより〔少しは体を大事にしてくれ〕との思いやりにあふれていたように感じられるのです。

ホァンの答えも「お前こそ、食いすぎるなよ。」なんて…

だめだ…またジワッと涙が…。


彼の最期の様子を、黒たちが知る時は来るのだろうか。


「俺の最期なんざ知ったってどうしようもねぇんだから、知らなくたっていいさ。 あいつらが自分の信じる道を行けたら…俺はそれで充分だ。 じゃぁな。」


そんなホァンの強気な笑顔が見えてきそうで…泣いてしまった…。



マオも、きちんと黒たちにお別れを告げて去っていったのですね。

最後の最後まで状況を冷静に分析して、一方では思わぬ事態に冷や汗をかいて。

人間味がいっぱい詰まっていたマオ。

だんだんと声が静かになり、「いつか俺に似た猫が会いにいくから」と……

もうあの飄々とした声を聞くことはできないのかな…


マオの姿を見送る黒の表情に、胸がぐっと締め付けられました。

本当に寂しかったのですね。黒は。


マオにだけはジョークを言い、心のどこかで頼りにしていた黒。

がんばれ……!!




契約者たちもドールも、パンドラの前に捻じ伏せられていく。


そんな中、ついに4〜5歳児の状態まで幼くなってしまったアンバー。

雨霧と別行動を取った後、何回も能力を使った模様。

もう後1回使えば、彼女の命は風前の灯になってしまう…。



最終局面の午前7時過ぎまで、残すところわずか。


黒………




最終回、どうなってしまうのだろう…





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橘の部屋
2007/09/25 21:08
DARKERTHANBLACK・黒の契約者#24「流星雨」(9/21)感想
旅をしてきたよ、時間のあちらからこちらまで。ずっとあなたに会いたかった。ただただ、あなたに会いたかった・・・。あなたの為なら何でも出来る。もう一度、その笑顔が見られるなら。あらすじは公式HPから。「組織」の追っ手から黒を逃す黄。黒は契約者ウェイとともに、... ...続きを見る
よろず屋の猫
2007/09/25 21:27
黒の契約者 第24話「流星雨」(感想)
こちらは感想です。内容は前半・後半。(まだ編集中です。まだ感想追加します。少し追記しました)黄!やはり撃たれていました。いつになく穏やかな表情で話す黄が印象的でした。あれほどの傷を負って平気なはずはないのに…黒や銀との別れも良かった。猫との掛け合いも良... ...続きを見る
からまつそう
2007/09/25 22:25
DARKER THAN BLACK -黒の契約者- 第24話 「流星雨」
ホア━━━。゚(゚´Д`゚)゚。━━━ン!!!! ...続きを見る
ミルクレモンティー
2007/09/25 22:31
DARKER THAN BLACK -黒の契約者- 第二十四話
 次々と流れ消えていく星。それは次々と殺され消えていく契約者達の命…  黒達への ...続きを見る
ぶろーくん・こんぱす
2007/09/25 22:37
darker than BLACK 第24話 感想
 さらば友よ・・・ ...続きを見る
荒野の出来事
2007/09/25 22:46
DARKER THAN BLACK 黒の契約者 第24話
サブタイトルは『流星雨』。ついにラスト直前・・・ あぁぁああ~だから“ラスト直前”ってイヤなんだよな~と思わされる展開。 切ねェ!寂しい!!哀しい・・・。 ...続きを見る
風庫~カゼクラ~
2007/09/25 23:50
黒の契約者 第24話「流星雨」
一気にいろんな事が分かったお話でしたね。分からないままの事もありそうですが、それなりに決着が付きそうです。 ...続きを見る
見ていて悪いか!
2007/09/26 09:57
「DARKER THAN BLACK 黒の契約者」レビュー2
「DARKER THAN BLACK 黒の契約者」についてのレビューをトラックバックで募集しています。 *キャラクター(声優):黒(木内秀信)、銀(福圓美里)、猫(沢木郁也)、黄(池田勝)、霧原未咲(水樹奈々)、斎藤雄介(志村知幸)、松本邦夫(福田信昭)、河野豊(鳥海浩輔.. ...続きを見る
アニメレビュー トラックバックセンター
2007/09/26 11:02
DARKERTHANBLACK-黒の契約者-第24話「流星雨」感想
黒の契約者も残り二話となりましたね。一体どんな結末を迎えるのでしょうか・・。DARKERTHANBLACK-黒の契約者-3/アニメーション[DVD]早速感想。う〜ん、今回は星が流れすぎ・・・。黄も・・・。銀は相変わらずかわいいよ。でも・・・。今回は少し忘れかけていたというか、... ...続きを見る
物書きチャリダー日記
2007/09/26 14:52
レビュー・評価:Darker than BLACK 黒の契約者/第24話 「流星雨」
品質評価 27 / 萌え評価 18 / 燃え評価 18 / ギャグ評価 0 / シリアス評価 81 / お色気評価 36 / 総合評価 30レビュー数 11 件 ...続きを見る
ANIMA-LIGHT:アニメ・マンガ・...
2007/09/26 18:00
DARKER THAN BLACK -黒の契約者- 24話「流星雨」
『「組織」の追っ手から黒を逃す黄。黒は契約者ウェイとともに、アンバーの待つゲートに繋がる、地下鉄内へと侵入する。その頃、未咲はシュレーダー博士のもとで真相を知る。イブニングプリムローズが東京消失を目論む理由。 ...続きを見る
Spare Time
2007/09/26 19:20
黒の契約者とロミジュリ
絶望した…!黄と猫はもはや唖然とした…。 ロミジュリの22話が録画が最後の10分尻切れになってて絶望した…!(放映時間ずれてましたよね…? ...続きを見る
アメダマ
2007/09/28 06:18
Darker than BLACK -黒の契約者- 2007/09/12~10/12
Darker than BLACK -黒の契約者-についての最近の情報です。 ...続きを見る
最新キーワードの情報収集・動画ブログ 第...
2007/10/13 08:33
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情報商材レビューinfo-chance....
2009/02/19 14:22
◎DARKERTHANBLACK-黒の契約者-第24話「流星雨」
「組織」の追っ手から黒を逃す黄。黒は契約者ウェイとともに、アンバーの待つゲートに繋がる、地下鉄内へと侵入する。その頃、未咲はシュレーダー博士のもとで真相を知る。イブニングプリムローズが東京消失を目論む理由。そして黒の属する「組織」の正体……。ゲート内に... ...続きを見る
ぺろぺろキャンディー
2010/01/02 04:06

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