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zoom RSS 『黒の契約者』第23話「神は天にいまし…」〔感想〕

<<   作成日時 : 2007/09/16 03:00   >>

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「ヘヴンズ・ゲートで何が起きたのか、俺は本当に知らない。 そこで白が…妹が消えた理由も。」
『DARKER THAN BLACK-黒の契約者-』第23話。黒(ヘイ)に訪れる、ひとときの安息。迷う未咲に「自分の信じた道を進め」と励ます黒。もうこのような時間は巡ってこないのだろうか。黒はついに、運命に導かれてゲートへと向かう……。



あの頃。

南米のジャングルで、無我夢中で戦う17歳の黒がいた。

乱れる呼吸。だが、敵側の契約者に追いつかれてしまう。襲いかかる激しい波動。もろに食らった黒は前のめりに回転し、ワイヤーを飛ばして辛うじて樹上へと逃れた。
波動により炸裂する大地。巻き起こる砂塵が徐々に収まり、勝利を確信した契約者は笑みを浮かべる。
その瞬間、首に巻きついたのは黒の放ったワイヤー。必死に上方を仰いで波動を発射しようとするが、黒が地面へ飛び降りて男を宙吊りに。
大きく肩を揺らし、目を見開く黒。 男の苦悶の声が響く。 硬く眼をつぶり、歯を食いしばり、渾身の力を込めてワイヤーを引く。
断末魔の叫びを最期に、男は絶命した……。

「白(パイ)、白! 大丈夫か、白!!」
生い茂る草を掻き分け、妹のもとへと駆けつける。
契約者のボディースーツに身を包み、沼の中心に佇む妹・白。
白の周囲にはすでに30人以上もの契約者が倒され、無残な姿で横たわっていた。
偽りの星空から、幾つもの流れ星が落ちていく。

凝視する黒の方へ、ゆっくりと白が振り返った。 穢れを知らない、静かな瞳で…。 




『昔の星空を知っていますか。 昔の星空の思い出はありますか。』
高架脇のビルで今日も営業中の久良沢探偵事務所に、小学生の少年と母親が訪れた。宿題のアンケートを集めてほしいのだという。
どうやら、人々の間でもっぱらの噂になっている【本当の星空が戻る夜】が背景にあるらしい。
「そういえば、今日じゃないですか! 夜中の12時から朝まで。 知らないんですか? ボス。」
キコがフォローし、凱は「んなわけあるか〜?!」と懐疑的。
「子どもの宿題と言えども、うちの芳広ちゃんが負けるわけにはいきません! 10万出しますから、集めてください。100人分。」
ポンと現金を提示され、キコの眼の色が変わった。 渋る凱を《熱湯お茶攻撃》で撃退し、二つ返事で引き受けることに。
「集めます! 100人分、集めさせていただきます!! 久良沢探偵事務所にお任せください!☆」

初台の警視庁仮庁舎。 宝来部長の前へ呼び出され、厳しい追及を受ける未咲。
「ノーベンバー11とは、何か特別な関係があったわけではないだろうな?」
「仕事上の関係以外は。」 未咲は淡々と答える。
「ディケイドが危惧していた通り、彼はEPRの一員になったと見て間違いない。」
だが、未咲の考えは違っていた。
《 果たしてそうだろうか? あの彼が仲間を裏切り、EPR側につくはずがない…》
「EPRに、ディケイドを殺す理由があるのでしょうか?」

食い下がる未咲に対し、宝来は断固として言い渡した。
「この案件に関する捜査権限は、我々の手を離れている。これ以上首を突っ込むな。」
怯まずに反論する未咲。 「先日のパンドラのやり方は、随分と強引でした。とても研究機関とは思えぬほどに。いつからパンドラは…」
「聞こえなかったか? 霧原。」 押し被せるような宝来の言葉に、未咲も口を噤むしかない。
「もはや我々が追う事件ではない。所詮、契約者が一人死んだだけの話だ。」

真っ直ぐ宝来の目を見つめ、未咲は毅然と言い切る。
「彼は…彼は、誇りを持って生きてきた人間だと思います。 契約者であろうと、なかろうと。
彼が私に言い残した最後の言葉は、『自分の信じることを行う』、でした。
…失礼します。」


「待て!」 宝来が鋭く呼び止める。「彼から連絡があったのか?!」
未咲はおもむろに振り向き、冷ややかに言い放った。
「冗談です。」
かつて11に向けた台詞を、宝来にぶつける未咲。
《 貴方がたより彼のほうが、よほど人間らしい心を持っていた…。》


「例の消失が起きて以来、南米のあの地域は誰も立ち入ることができねぇ。 分かっているのは、ゲートを巡って派手な紛争が起きたってことだけだ。 世界大戦並みのな。」
黒が憤慨して立ち去った後の公園のベンチにホァン、マオ、銀が座り、ホァンの説明に耳を傾けている。
いまやブラジルの首都・ブラジリア、大都市リオ・デ・ジャネイロ、サンパウロを含む広大なブラジル高原一帯が【不可侵領域】となっているのだ。
「そしてその戦いには、大量の契約者達が兵器として投入された。 その中に、黒とアンバーがいた。 同じ組織の中に。 『黒の死神』と恐れられていた頃の黒は、まだ契約者でも何でもなかったって話だ。」
「そうなのか?!」 初めて聞く話に驚くマオ。
「本当に恐れられていた契約者は、他にいた。 白と呼ばれた、黒の妹だ。」
無言で聞く銀。 それは、アンバーから聞かされた話を裏付けるものだった。


交差点の歩道橋を渡る黒の脳裏に、忘れたくても忘れられない辛い夜が甦る……。

命じられるままに大量殺戮を繰り返す妹・白。 彼女の対価は【人を殺めた後、兄の胸に抱かれて眠ること】
幼子のように体を丸め、黒の胸で眠り続ける妹。
その体を抱きかかえ、17歳の黒は倒木の根元にもたれて星空を見上げていた。 …偽りの星空を…。
「まだ続いてるんだ。 対価。」
20歳代の姿をしたアンバーが声を掛ける。 だが、黒が星空から視線を外すことはない。
「いつも一緒だよね。 恋人みたいに。」
からかうようなアンバーの言葉。 その奥底に秘められた、せつない嫉妬。
「また、星見てるんだ。」
「やることがないから見てるだけだ。」
黒はすかさず言い返す。
言葉とは裏腹に、黒がどんなに本当の星空を見たがっているか。 それはアンバーも痛いほど分かっている。

不意に、アンバーは低い声で呟いた。
「いつまで見上げてたって、昔の星は見えない。」

その表情から笑顔が消え、視線を下ろし、そのまま立ち去る。
すでにEPRの活動を秘かに重ね、ゲート消失へと突き進んでいたアンバーには、ひたすらに過去を想う黒がもどかしく映る。
それでも黒は、じっと星空を見上げ続けた。
やがて、哀しげに胸元の妹を見つめる。
自分の業(ごう)に苦悩することすらできずに、昏々と眠り続ける妹……。


記憶の中から現実に引き戻された黒。 ゆっくりと、一歩一歩拾うような足取りで歩いていく。


執務室から秘匿回線を使い、何者かに情報を伝えるエリック西島。
「そうです。シュレーダーによれば、そこで仮面の契約者が放った光は、南米ゲート消失時に観測された光と同一のものである可能性が高い、と。」

「光だと?」
信じられない、という声で訊き返すホァン。 今度はマオが説明する番だ。
「ああ、物凄い光だった。 あんなのは今まで見たことがない。 何でアンバーが黒を追うのか。 南米と同じことをここでやろうとしているアンバーに、黒の力が必要だとするなら、その説明がつく。」
「南米のゲート消失と黒の間に関係があるってのか。 …おい、待てよ? もしそれが事実だとしたら…! 」

「その契約者が、BK201であることは確認されています。 ええ、すでに彼と彼のユニット全員を排除するよう、手は打ってあります。」
黒たち4人の抹殺計画を告げる、エリックの冷静な声…。


引き受けたアンケート聴取のため、海月荘へやってきた凱とキコ。 美鈴おばちゃまが星に無頓着と知り、花の世話に精を出す夫・敏郎に目をつけた。
「お父さん、昔の星の思い出は何かありませんか?」 可能な限りのスマイルで尋ねる凱。
「無駄よ、この人に聞いたって。 無口なんだから。」 美鈴のツッコミ。 だが、意外にも敏郎は軽やかに語りだした。
「やっぱり懐かしいのは、ジャコビニ流星群を観に行った夜かね。」 「いいいいっ??!!」
さらに、いつものホウムラン軒でもアンケート。 最初は乗り気でなかったお店の主人も、娘が幼い頃の記憶を思い出す。
みなそれぞれに、星への熱い思いを抱えている。

愛車を駆って街へと新宿の街へと出た未咲は、部下の斎藤と河野が自分を尾行していることに気づく。
命じた人間について尋ねても、困ったように言葉を濁す斎藤刑事。
「これからは尾行は大塚にさせた方が良さそうだな。」 「課長…!! 」
誰にもぶつけられない憤りを胸に、未咲は徒歩で移動することに。
ノーベンバー11が最期を迎えた場所を訪れた未咲は、白ユリとバラの豪華な花束が捧げられているのを目にする。
傍には…ノーベンバーが対価に選んだ銘柄の煙草と、エイプリルが愛飲していたビール。
ジュライとともに、エイプリルは相棒の死を悼んでいるのだ…。
足を止めて見つめた後、そっと目を伏せて哀悼の意を表し、未咲は歩き出す。

その時、俯きながら道を行く青年を見つけた。 彼も未咲に気づき、「あ…」という表情になる。
「李くん…?」
黒は会釈をし、沈んだ顔で歩き始めた。
未咲はハッとし、「待って! 」と叫びながら後を追う。 黒に追いついて腕を掴んだところで我に返った。
《 「あなたは仮面の契約者じゃないよね? 」なんて訊けないし…》
「あの…お腹、空いてない?」 「…は?!」
同じように大食漢の二人。 何とか話題がつながり、未咲はホッとする。

一緒にビルの上層階にある焼肉店を訪れ、黒は何十枚も皿を平らげていく。
「そんなにお腹空いてるように見えました?」
「…いや。ちょっとね、知ってる人と似てる気がして。」
食べ続けていた黒の箸が止まる。 「追いかけてる犯人とかじゃないでしょうね?」
ギョッとした未咲は、思わず噎せて咳き込んでしまった。
「やっぱりそうだったんですか?」 「え…いやその、あはははは…」
必死にごまかそうと箸を伸ばす未咲。 不意に、黒の語調が低く変わった。

「そのまま動くな。 後ろの席からあんたを狙ってる。」

心臓を射抜かれたように未咲は固まり、黒を凝視した。 表情の一変した黒がそこにいる。
だが……、口元にはご飯粒が。
まじまじと見つめていた未咲はプッと吹き出し、ついには大笑いが止まらなくなってしまった。
「ちょっとやだ、全然迫力ない! 」 「そうですか?」 「だって、ふふふふ…!!」
どこまで相手が気づいているのかを知ろうとした黒だったが、さすがにご飯粒を摘まんでガックリの表情。
でも、楽しそうに笑う未咲を見ているうちに《やれやれ、仕方ないか》と微笑を浮かべる。

「不思議なものでね、長い間ホシを追い続けていると、少し愛着のようなものが湧いてくる。」
「仕事熱心なんですね。」
「確かにバリバリやってきたと思う。 でもいつの間にか、組織の中に飲み込まれてしまって。自分を見失いかけてる気がして。」
「組織はどこも同じです。 所詮、都合のいい手駒として使われるだけで。」
「そうかもね…。」
それぞれの組織に対する思いを語り合う二人。 未咲の中に、黒へのささやかな共感が生まれる。

食事代を払えずレジで立ち往生していた凱とキコは、ちょうど会計のためやってきた黒と未咲に遭遇。
「あーーーっ!! ウソウソ、マジですかっ?! ショック…!! 李さん、年増好みだったんですか?!」
キコの容赦ない舌鋒に、未咲は思わずバッグを取り落とす。
「と…年増…」

黒が凱の代金を立て替え、4人は連れ立って外へ出る。 話題は自然と『星の思い出』アンケートに。
「星…? 」 「そう。昔の星にまつわる、思い出みたいな。」 「結構みんな語りたがるですよ。」
ゲートが出現して以降、人々がどことなく不安を感じているためだと捉えている凱。
「不安? 」 「あったでしょ、この前の爆破事件とか。 みんな平気な顔をしてるけど、やっぱり何となく今が不安なんじゃないの? だから、思い出に浸りたくなる。」
探偵事務所の近くまで来ると、凱とキコはあっけらかんと挨拶。
「じゃ、あたしらはここらで。 や〜今日は助かった。ご馳走さん! 」
「『ご馳走さん』じゃないです! ちゃんと返してくださいよ! 」
黒の声も、上機嫌な二人には聞こえているのかどうか…。

ビルの屋上にあるバッティングセンターへと向かった未咲と黒は、気持ちのよい汗を流した。
慣れた様子で快音を響かせる未咲に対し、初挑戦の黒は空振りして尻餅をついてしまう。
楽しそうに笑う未咲を見て、黒も優しい微笑を浮かべた。
やる気を出せば打てるのだが、今は未咲の笑顔にとても癒される…。
一休みしようと座る未咲に、スポーツ飲料の缶を渡す黒。
「ありがとう。」
二人の周りを穏やかなひとときが流れていく。
「いい眺めですね。」 「えっ?」
黒の言葉に少しドキッとした未咲は、彼の視線が夜景に注がれていることに気づく。
「この街はどう? 好き? 」
「そうですね…。嫌いじゃないです。 程ほどによそよそしくて、程ほどに温かい。 ただの通過点のつもりだったけど、今は…ここが自分の居場所なら、どんなにいいかな…って。」
「そう。 でも、この街も日ごとに物騒になってきて…。」
「まだ平和です、この街は。 妹と一緒にいた場所は、もっと酷かった…。」
「どこかの紛争地域にでもいたの?」
黒は無言でうなずく。 その横顔に、ふと厳しい表情が浮かぶ。
「妹さんは? まだそこに?」
「…いえ、もう…。」 寂しそうな黒の声。
「亡くなられたの…。それは悲しかったでしょう…。」
俯く未咲。 だが、黒の答えは意外なものだった。
「どうかな…。」 「え?」
「…ホッとしたのかもしれません。」
穏やかな黒の表情。
人の命を奪うためだけに生きていた妹。 少なくとも今では、妹は呪われた業から自由になった。
彼自身もまた、殺人機械と化した妹を見守る《地獄の責め苦》から解放されている。
黒が今まで誰にも語らなかった心の内側。 彼の秘密を知らない未咲にも、その言葉は深く刻まれた。

午前零時5分前。 人気のないグラウンドの朝礼台に並んで腰を下ろし、二人は語り合う。
「知ってる? 例の噂。」 「聞いてますけど、あり得ない…。」
「私も、誰も信じてないって思ってたけど。 …あっ、見て! 」
未咲が指さす方へ目をやると、ビルや人家の明かりが次々に消灯されていく。
まるで本当の星を迎える準備のように。
カメラを構え、あるいは公園のベンチに座り、あるいは道で立ち止まって、曇りの夜空を見上げる人々。
海月荘の住人・バボ、大家の大山夫妻、ホウムラン軒の王親子。
凱とキコも、事務所の明かりを消して窓際に立つ。
それぞれが星への思いをかかえ、昔の星空が甦る時を待っている。

「一晩中、みんな夜空を見上げてるつもり…? 晴れるまで。」
「観たいですか? 本当の星。」
「見たいっていうか…見せてあげたい。 でも、今の星が消えなきゃ、昔の星は見えないんだよね。」
「…どうせ偽物の星です。」
自分と重ね合わせるかのように、自嘲気味に語る黒。
「だけど、今輝いている偽りの星が全部消えたとしたら…それはそれで哀しいような…。」
そう呟く未咲を、黒はそっと見守っている。
ポケットで携帯が鳴り、「もう行かなきゃ。」と未咲は地面へ軽く跳び下りた。
「話せて良かった。 いろんなこと考えすぎて、ちょっと迷ってたんだけど。」
微笑みながら見ていた黒は、励ますように語りかけた。

「迷った時は、自分の直感を信じて動けばいいんじゃないですか? 」

ノーベンバー11と同じ言葉。 未咲はハッとして思わず黒を見つめる。
「…どうかしましたか?」
「あ…ううん、そうだよね。」
黒に近寄ると、右手を差し出した。 「あ…」
「付き合ってくれてありがとう。 楽しかった。」
「僕もです。」
「じゃ、またね。」
握手を交わす二人。 バッグを肩に掛け、未咲は駆けて行く。
独りになり、夜空を見上げる黒。 せつない横顔。
思い浮かべるのは、妹のこと……。


「おにいちゃん。」
沼の中から振り返り、静かな瞳で黒を見る妹・白。 やがて急激な眠りへと引き込まれ、フラッとくずおれていく。
必死で駆け寄って支えると、白は小さな声で囁いた。
「星、流したよ。 今日も…いっぱい……」
幼い頃、『流れ星にお願いしてごらん』と教えた黒の言葉。
殺人者へと変貌した白の中に、その言葉はまだ鮮明に生きている。
流れ星を流すことが…自分の夢に繋がると信じる妹…。
ガクリと体が力を失い、白の意識は眠りの世界へと消えた。 夜空では、数え切れないほどの契約者の星達が流れ続けている。
黒は…のけぞった白の首に右手を置いた…。
《 これ以上、妹が血に染まっていくのを見たくない…。 …死ぬことでしか…この業から救われないのなら…》

「黒、終わったよ。帰ろう。 …っ?!」
後ろ姿に声を掛けたアンバーは、こちらを向いた黒の様子に気づいて息を呑んだ。
表情を変えないまま、大粒の涙が…黒の瞳から零れ落ちる。
人の道から外れていく妹のために泣くことすら許されない、地獄の日々……。


午前零時。 本当の星空が見えるとされた時間。 黒の涙のような雨が降り出す。
事務所の窓から空を見つめるキコは、落胆した声を出した。
「だから見えるわけないって言ったろう? 」 「ボス、さっきまで結構真剣に見てたじゃないですか! 」
「探偵はリアリストでなきゃ勤まらないんだぞ、キコ。 星が消えようが変なゲートができようが、周りの状況がどう変わろうと、人の営みに変わりはない。」
フウッと紫煙を吐き出し、凱は微苦笑とともに呟く。
「全て世はこともなし、か…。」

突然、北新宿に3発の銃声が響いた。
だが海月荘への家路を辿る黒には、その音は聞こえていない。
俯いて歩く黒の前に、不意にマオが塀の上から現れた。
「黒! 家へ戻るな!」 「どうした?!」 「いいから!」
そこへ、ホァンの愛車が急ブレーキとともに停止。 運転席側のフロントガラスには銃弾が撃ち込まれている。
「早く乗れ!」 「ホァン?!」 「俺たちは組織に切り捨てられたらしい…!」
「なに?! 何故だ!」 「こっちが聞きてぇよ…」 体に銃弾を受けたのか、苦しげなホァン。
マオが近寄り、黒を見上げた。
「黒、お前、南米のゲート消失のことで何か隠していることはないのか?」
ギョッとしてマオを見る黒だったが、聞き慣れない微かな高音がどこかから聞こえてくる。 思わず身構えた黒に、突然巨大な重力が襲いかかる。
地面に叩きつけられる黒とマオ。ホァンも運転席で身動きが取れない。
黒は必死に顔を捻り、近付いてくる男を睨みつけた。
「そう睨むな、BK201。これも命令でな。」
男の瞳孔が紅く輝き、さらに強い重力が黒を地面へと押さえつける。
その瞬間、指を鳴らす音とともに男の絶叫が響き渡った。 のしかかる力が消え、黒は目を見開く。
「重力使いですか。 力の強い能力者は、力を過信しすぎて脇が甘くなりがちです。」
「お前は…っ!」
男の傍からウェイが立ち上がった。
「おっと、大丈夫ですよ。そう警戒しなくても。 私は使いで来たんですから。 アンバーの。」
瞳を細めて睨んでいた黒がハッとする。
「ゲートの中で貴方を待ってます。BK201。」
「バカな! 大体、そう簡単に入れるようなところじゃ…」
マオの反駁に、ウェイは肩をすくめて見せた。
「だから案内しようと言うんです。私が。」 「そんな虫のいい話!」その時、黒が口を開く。
「…分かった。」 「黒!?」

「ヘヴンズ・ゲートで何が起きたのか、俺は本当に知らない。 そこで白が…妹が消えた理由も。 知っているのはアンバーだけだ。 …だから。」

「それを聞きたいってのか。」 ホァンの問いかけに黒はうなずく。
突然、後部座席に座る銀の静かな声が響いた。 「そうして。」
思いもかけない反応に振り向く黒。 銀の硬い声が畳み掛ける。
「アンバーと会って。 アンバーと話をして。」
ホァンが大きくアクセルをふかす。 「ホァン!」 マオが驚いて叫ぶ。
「乗れよ。 送ってってやるぜ。 行けるとこまでな。」
痛みを堪え、脂汗を浮かべながら強気な笑みを見せるホァン。 その顔を見つめ、黒の表情がグッと引き締まる。

その頃。
外事4課を無視して組織が動き出したことを松本から知らされ、未咲は怒りを露わにしていた。
「なぜです?! なぜ我々の頭越しに上が動いて…?!」 「上層部に介入があったのかもしれません。」 「介入…?」
未咲の携帯が鳴り出す。 刑事局長である父からの電話。
「すぐに避難しろ!未咲! 詳しいことは後で話す!すぐに東京を離れるんだ!」
咄嗟に事態を飲み込めなかった未咲は、ある事実に思い至って愕然とした。
「まさか…起こるというの…? 南米のようなことが…!」

ゲート内のパンドラでは、エリックの指揮の下で着々と【ある作戦】が始まろうとしていた。防護服に身を固めた研究者達。
一方のアンバーもパンドラ内に侵入。 雨霧を従え、16名の契約者に指示を出す。
「とりあえずの目的は2つ。 ゲートの中へドール達を導くこと。 粒子加速器を破壊すること。」
流星の欠片が割られ、ブリタの手で契約者達に配られていく。
配布完了の合図を雨霧から受け、アンバーは朗らかに宣言する。
「じゃあ、始めよっか!」



ついに、全てはゲートへと集結した。

そこを訪れた黒の前に、何が示されるのか。






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南米のゲート消失前。

黒なしには、白は対価を支払うことができなかった。

どんなに苦しくても、心がズタズタになるほど傷ついても、妹の傍を離れることはできない。


《 妹ともに命を絶ってしまいたい……。 死しか救いがないのなら。》


孤独な絶望の淵にいた、黒。

今の白は、兄の苦悩を理解し、受け止めているのかもしれないですね。

黒とともに存在することで。


兄妹がきちんと向き合って、自分の言葉で語り合えたら…いいな…。





「自分の直感を信じ、その信じた道を進む。」


黒は、ノーベンバーと同じ思いを抱いている。


彼の考え方を、ノーベンバーはしっかりと理解していたんですね…!


未咲がこれからぶつかる事態は想像もつかないけれど、彼らの言葉が未咲を導いてくれますように。




【神は天にいまし。 すべて世は事もなし。】


イギリスの詩人、ブラウニングの詩の一節から取られた今回のテーマ。


一見すると何も起こっていないように思える東京。


その最深部で、密やかな戦いの幕が上がる……。





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なななな駄文
2007/09/17 01:10
「DARKERTHANBLACK黒の契約者」第23話
第二十三話「神は天にいまし・・・」ゲート出現とともに出現した偽りの星。人々の間で、一夜だけ本当の星空が戻るという噂が流れる。その頃、先の大使館爆破事件を気にかけていた未咲は黒と遭遇。昔の星空が戻るという夜更けまで時間を共にすることに。だが、危機は目前に... ...続きを見る
日々“是”精進!
2007/09/17 05:33
「DARKER THAN BLACK 黒の契約者」レビュー2
「DARKER THAN BLACK 黒の契約者」についてのレビューをトラックバックで募集しています。 *キャラクター(声優):黒(木内秀信)、銀(福圓美里)、猫(沢木郁也)、黄(池田勝)、霧原未咲(水樹奈々)、斎藤雄介(志村知幸)、松本邦夫(福田信昭)、河野豊(鳥海浩輔.. ...続きを見る
アニメレビュー トラックバックセンター
2007/09/17 05:37
DARKERTHANBLACK-黒の契約者-第23話「神は天にいまし…」感想
黒の契約者も終盤。毎回どんな展開なのか、目が離せませんね。DARKERTHANBLACK -黒の契約者-3早速感想。HEY!?おれのお姉さんといい関係になりやがって!・・・とか言うと真剣に俺の頭が悪いと思われるのでやめておきますが、今回は霧原さんとキコがかわいかったね!... ...続きを見る
物書きチャリダー日記
2007/09/17 08:22
DarkerthanBlack黒の契約者#23「神は天にいまし…」感想
消滅した南米ゲート。そこは多くの契約者たちが命を掛けて戦う戦場。白は消えて、黒の想いは星空を翔けた。「神は天にいまし…」あらすじは公式からです。ゲート出現とともに出現した偽りの星。人々の間で、一夜だけ本当の星空が戻るという噂が流れる。その頃、先の大使館... ...続きを見る
おぼろ二次元日記
2007/09/17 08:44
DARKER THAN BLACK〜黒の契約者〜#23
 【神は天にいまし・・・】  ...続きを見る
日々是「紫」
2007/09/17 09:06
「DARKER THAN BLACK 黒の契約者」#23 未咲にじぇらしぃ〜
くぅ〜っ羨ましいよぉ〜っ 未咲のやつ〜、うまいこと黒(ヘイ)とデートしやがってぇ〜っ …って、あらら、いきなりお下品ね。 でも焼肉おごってくれるなら私も未咲に付いてくわ〜(コラ) それにしても美味そうに食うよね、貴女。 ...続きを見る
橘の部屋
2007/09/17 11:40
DARKERTHANBLACK・黒の契約者 #23「神は天にいまし…」 (9/14)...
思い出は月日に研磨されて輝きだけが残る。もう一度見たいのは、あの頃の星。あらすじは公式HPから。ゲート出現とともに出現した偽りの星。人々の間で、一夜だけ本当の星空が戻るという噂が流れる。その頃、先の大使館爆破事件を気にかけていた未咲は黒と遭遇。昔の星空が... ...続きを見る
よろず屋の猫
2007/09/17 12:17
Darker Than Black #23『神は天にいまし…』
アバンはまだ黒が契約者でなかった頃、必殺仕事人(違)だった頃。 ...続きを見る
Ca va? 味噌煮定食
2007/09/17 15:21
DTB-黒の契約者- 第23話「神は天にいまし…」
全ての鍵はアンバーが握ってる・・・ ...続きを見る
●○PEKO LIFE●○
2007/09/17 17:27
黒の契約者 第23話「神は天にいまし…」
今回から前後編に分かれなくなりました。って、ま、ここまで来たらそうですよね。 ...続きを見る
見ていて悪いか!
2007/09/17 17:52
Darker than BLACK -黒の契約者- 第23話 色々な職業
必殺仕事人  リーさんは 必殺仕事人だった   闇にひそむ契約者 やつら人じゃねえ   と、ワイヤーのみで契約者を倒す すげえ〜  妹さんは契約者 その代償がお兄ちゃん抱っこ   なんつーーおいしい代償 この頃からジゴロの下準備が出来てたのか ...続きを見る
物語を食べて生きてます
2007/09/17 21:02
DARKER THAN BLACK -黒の契約者- 第23話
         「神は天にいまし・・・」 ...続きを見る
ミルクレモンティー
2007/09/17 21:50
DARKER THAN BLACK 黒の契約者「神は天にいまし…」
 前・後編構成が終わり、今回からはラストに向けてノンストップ。少しも見逃せません。 ...続きを見る
アンカー教授のたわごと
2007/09/17 23:06
darker than BLACK 第23話 感想
 題名がいつもと違うだけ!! ...続きを見る
荒野の出来事
2007/09/17 23:08
黒の契約者 第23話「神は天にいまし…」(感想)
こちらは感想です。内容は前半・後半です。相変わらずうまくまとまらないので訂正追加があるものと思われます。世の中も黒の心も大きく動き出しました。契約者になる前の黒が、見た目も幼いし、何より必死な感じで可愛い。今と同様ワイヤーの使い手だったようですが、電撃... ...続きを見る
からまつそう
2007/09/18 01:11
DTB23〜きみの涙に恋してる
 なんだ。妹も契約者だったのか。あの夥しい数の死体も、妹が殺った、と。最強じゃん。いや、待てよ。確か、最強はハヴォック嬢じゃなかったっけ? 彼女も南米にいたはずだが、出てこねぇな。  で、妹の対価はお ...続きを見る
夢見る不惑☆星
2007/09/18 12:25
DARKER THAN BLACK -黒の契約者- 第23話 「神は天にいまし…」
DARKER THAN BLACK 黒の契約者   現時点での評価:3.0〜   [アクション]   MBS : 04/05 25:25〜  中国放送 : 04/07 26:40〜   CBC : 04/05 26:55〜  熊本放送 : 04/08 26:30〜   北海道放送 : 04/05 26:10〜  山陽放送 : 04/09 26:25〜   TBS :... ...続きを見る
アニメって本当に面白いですね。
2007/09/21 03:03

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