アクロイアへようこそ

アクセスカウンタ

zoom RSS 『黒の契約者』第20話「あさき夢見し、酔いもせず……後編」〔感想〕

<<   作成日時 : 2007/08/19 17:19   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 35 / コメント 0

「俺たちは一体何だ。ただの組織の狗か? …逃げろ、彼女と一緒に。」
『DARKER THAN BLACK-黒の契約者-』第20話。自らの存在を受け止めた黒。その熱い言葉に、ホァンと志保子の心も動かされていく。穏やかな朝の港。その人は、思いを振り切るように駆け出した…。


「遅いぞ。呼び出したくせに。」
マオの軽いジャブが闇に響く。工事中のビルの谷間。パーカーにジーンズの普段着へと着替えた黒(ヘイ)は壁にもたれ、マオとともにホァンを迎えた。
だがホァンはマオの相手をせずに淡々と指示を与える。いつもの辛辣な口調は火が消えたように静かだ。
「上から命令が来た。教祖の殺害を再度実行する。」
瞳を閉じて聞いていた黒が任務の表情を見せて応える。 「分かった。」
「まだある。捕らえられた女の処分だ。」 「…使い捨てか?」
黒の言葉にも反応を示さず、ホァンは厳しい声で続けた。 「今度は失敗できねぇ。 俺が行く。」
じっと相手の表情を見つめる黒。 《 何を考えている? ホァン。》
「明日16時、いつもの所だ。」 それだけ告げると、ホァンは踵を返して去っていく。 嫌味も言わず、何かを思いつめたような後姿。

「確かに、らしくないな。」 ホァンを見送ると、マオが語調を改めて声を掛けてきた。「待て、黒。 実はな、俺の方にも命令があった。」
「…命令?」 怪訝そうに黒が聞き返す。 黒へと向けられたマオの瞳が光を帯びる。
「正確には俺とお前に、だ。 万が一、ホァンが捕らえられた女の処分を出来なかった場合…『ホァンを殺れ』、と。」
無言でマオを見つめる黒。 《 殺す…ホァンを…? 》 


深夜、教団本部の敷地へと身を潜めた黒たち。漆黒の羽を持つカラスへと憑依したマオが探索役を買って出る。
「西側は完全にガラ空きだ。」 分かった。警報が鳴ったら頼むぜ。」
ナップザックを背負ったホァンが先に立ち、ショルダーバッグを斜め掛けした黒が後に続いて闇へと姿を消す。
黒の投げたロープに掴まりホァンも無事に本部内へ潜入。 バッグから取り出した催涙弾を投げ、警備要員がひるんだ隙に志保子の拘束されている部屋へと急ぐ。
黒が軽く電子ロックに電撃を当てると、ドアが静かに開かれる。 倒れたまま動かない志保子。
「おい!」 ガスマスクと帽子を投げ捨て、ホァンは夢中で駆け寄った。必死に志保子を抱き起こし、頬を叩いて目を覚まさせようとする。
やがてそれが功を奏し、うっすらと志保子が目を開けた。
「なんて顔をしてやがる…。自白剤でも打たれたか? 忘れたとは言わせねぇぜ、俺の顔を。」
きつい口調の中にも心配そうなホァン。 ようやく志保子は相手を認識し、愕然として目を見開く。
と、そこへ警報音がけたたましく鳴り響いた。
外では再びカラスへと憑依したマオが手榴弾を投下。打ち合わせどおり、本部の建物に火災が発生。
「教祖はどこだ? 教祖の居場所を教えるんだ!」 ホァンの詰問を受け、それまで呆然としていた志保子はいつもの冷静な口調を取り戻した。
「…教祖は教団にはいない。 ここから200mほど上の北斜面に小さな廃村がある。その一軒に…。 たぶん、周囲に警護の者がいるから分かるはず。」
黒を教祖の元へと向かわせ、ホァンは志保子を連れて陽動作戦に打って出た。ともにガスマスクを装着し、警備の突破を試みる。
途中でライフルを構えた信徒と至近距離で鉢合わせするが、志保子が能力を発動。悪夢のような信徒の死を間近に見て、ホァンはショックを受ける。
それでも、志保子の手を握って必死に駆け続けた。


その頃、廃村へと疾走した黒は教祖・アルマの隠れる寂れた屋敷へと到着。 すれ違いざま警護の二人を電撃で気絶させるが、ドール確保を念押しするため訪れていた雨霧の待ち伏せに合う。
咄嗟に攻撃を避け、激しく回転して着地する黒。 だが仮面が割れ、左肩を押さえてうずくまる形に。
片手を掲げたまま、雨霧は黒を冷たく見据えた。
「お前か…。 大人しく引き下がれば、これ以上追わない。 アンバーの許しがなければお前を殺すわけにはいかないのでな。 どうやら彼女はお前を仲間に誘いたいらしい。 光栄な話じゃないか。 大人しく来たらどうだ?」
皮肉な雨霧の微笑。 その顔を見据えていた黒は、叫ぶと同時にナイフを放った。
「断る!」
雨霧の能力が発動。ナイフが粉砕され、その間に黒が身を翻して突破する。 雨霧は再び家屋を破壊するが、それ以上の黒の追跡を断念。
小さな物置の近くに隠れ、周囲に視線を走らせる黒。 不意に、老女の穏やかな声が響いた。

「入っておいで。 そこにいるのは分かってるんだ。 …別に罠じゃないさ。 お入り。」
一瞬の後、黒は物置の中の隠し階段へと身を躍らせた。

対価のゆで卵を頬張る雨霧に声を掛けたのは、EPRの若い女性契約者。 「追わないんですか?」
「ドールの移送が先だ。残りは別ルートで確保する。」 「決裂ですか…。教祖との交渉は。」 「決裂も何も、あれは駄目だな。もう使えない。」
アルマの素っ気ない対応を思い浮かべ、忌々しげに次の卵を口に放り込む。
「あと二個か…。因果な対価だ。コレステロールが溜まってしょうがない。」

マオを後部座席に乗せ、ホァン---かつての久野警部は、市街地の隠れ家を目指して愛車を走らせていた。
助手席の志保子は硬い表情。
「恐ろしい女だな、お前は…。さっきはゾッとしたぜ。あの夜を思い出してな。 お前が俺に近付いたのは、最初から計算ずくだった。俺と磯崎が得た情報を探るために。」

7年前。 出会ってから半年経った秋。 久野の控えめなプロポーズを受け、志保子は心底幸せそうな笑顔を見せた。
「キヨピィが私でいいなら、すごぉく嬉しいよ。」
「一緒になれよ。…騙すんじゃねぇぞ。」 幸福感に包まれて珍しくほろ酔い気分の久野の隣で、黙って夜空を眺める志保子。 偽りの流れ星が一つ…。
「ねぇ、キヨピィ。」 「ん?」 「…訊きたいことがあるんだ。」

「なぜ磯崎を殺した? あいつの女房はな、政府の手で磯崎の記憶を消されたんだ。すっぽりとな。判るか? 磯崎は愛する者の記憶からも消され、二度殺されたんだ。 全てお前の所為でな…!」
「あの磯崎と言う男も、あなたの前では素性を偽っていた。」 「なに?! 」 視線を前に向けたまま、志保子は語り始めた。
久野と磯崎が追っていた不法入国者の一団。 それが、今の教団の初期メンバー。磯崎も裏で彼らと繋がっていたのだ。
「あなた達が見付けた不審な老女の写真。それがアルマの本当の姿だった。磯崎はその写真を上司に報告すると見せかけて隠匿した。 あの段階では、あなたと磯崎のどちらが教団のスパイか把握できていなかった。 だから。」
志保子が初めてホァンの方へと顔を向ける。 愕然とするホァン…。

人気の無いバーへと車を止めたホァンは、マオを見張りに残して志保子とともに店内へ。
「1時間だけ待つ。黒が戻ってくるまでだ。」 「戻ってこなかったら? 」 「俺がもう一度教団へ行く。お前を殺してからな。」
志保子を座らせ、拳銃を突きつけたまま沈鬱な表情で疑問をぶつける。 「もう一つだけ、訊きたいことがある。 なぜ俺は…記憶を消されずに済んだ?」
「それは…」 口を開きかけた志保子が、突然苦しみ出した。
「どうした?! 志保子!」


「お入り。あの時の契約者だね?」
隠し部屋へと招きいれられた黒は、大きな寝台に横たわるアルマと対峙した。
「それがお前の本当の姿か。」
「さぁ…どうだかね。 実は、自分でも判らなくなっているのさ。 私の対価は【老化】だからね、能力を使うたびに老いていく。 そして、どうやらもう長くは無いらしい。」
力なく瞳を閉じたまま、アルマは黒に尋ねた。「あんたはどうして組織に利用されているんだい? まぁ、組織が放っておいてくれないか。」

アルマの言葉は続く。
「契約者の業(ごう)っていうのかね。社会常識や良心といったものが消え、自分の能力を使うことに躊躇いがなくなる。人を殺めるような力が多いから、必然、殺人マシーンのように便利に使われる。人間様の都合のいいようにね。」
「…『契約者は人間じゃない』とでも言うような口ぶりだな。」
「少なくともあっちはそう思っている。」
そんな業から契約者を解き放つために信仰を選んだアルマ。 最初は隠れ蓑のつもりだったが、今はそれが正しかったと感じている、と語る。

「分かるかい? 契約者と人間の違い。」 静かな口調で問いかけるアルマに、黒は表情を変えずに答えた。
「『契約者は心が無い』。」
「…本当にそうだったかい?」
黒は凝然と目を見開く。 脳裏に浮かぶ、今まで出会った契約者たち…。

  ルイ、ジャン、ルーコ。 虚ろな視線の舞。
  雨の屋上で対決した浮山。 指を鳴らすウェイ。 イツァークとベルタ。
  エイプリル。 ノーベンバー11。 マキ少年。 ハヴォック。
  黒の言葉に優しく微笑み、頷いてくれたニック。
  能力を発動するアンバー。

彼らはみな、程度の違いはあれど、豊かな感情を持っていた。 時には、一般人を凌駕するほどの。

「『契約者には、罪の意識が無い』。」
− 「契約者であろうがなかろうが、罪を犯す者は犯す。」
「『能力の有る無し、それは明らかに違う。』」
− 「それは、おまけみたいなもんさ。能力なんかなくても、銃や刀があれば人の命を奪うことはできる。」
そしてアルマは、最も重要な点を導き出していく。

人間と契約者の一番の違いは、その精神構造。いわゆる『合理的判断』ってやつだ。
人間の社会では感情や常識に囚われず、利益だけを求める奴が成功するようにできてるだろう? 契約者ってのは案外、そのシステムを勝ち抜く進化の形かもしれないよ。」


「…『契約者は夢を見ない。』」
「私は夢見てきたよ。 契約者と人間を結ぶ、そのあるべき形を。」
能力を使って人を殺めたこともある。それまでは対価が大きすぎて使いたくはなかったが、その時からあえて能力を使い続けることに決めたのだ。
「こういう風にね。」 衝撃を受け、瞠目する黒。 年老いたアルマが瑞々しく若返っていく。
「能力を繰り返し使えば、老化という対価も繰り返される。 せめてもの償いになればと思ってね。 …おかしいだろう? 契約者が償いなんて言葉を口にするのは。」
微笑んで黒を見ると、アルマは遠くを見つめた。
「どうやら、最後の対価を支払う時が来たようだ。 これで…解き放たれる。私も…私の業から……」
穏やかな笑みを浮かべ、アルマは瞳を閉じる。 黒は沈黙したままその最期を目に焼き付けた。
老いた姿に戻り、永遠の眠りに就くアルマ-----。


「皮肉な対価でしょ…? しばらくの間だけ、人間らしい感受性が…戻る…。」
椅子にうつ伏せになり、志保子は迫り来る恐怖と闘っていた。 自分が犯してきた罪がはっきりと感じ取れ、押し潰されそうになる。
「こわい…よ…!」 必死にホァンの腕へ縋る志保子。 銃を持った手で抱き締めようとするが、ホァンは歯を食いしばって彼女を突き飛ばした。
「騙されやしねぇ!! もう、てめぇの芝居には…!!」

「でも…なんだか半分くらいはホッとする…」 志保子の思いがけない述懐に、ホァンは目を見開いた。 階段を下りてきた黒もじっと聞き入る。
「契約者にも記憶はある。でも、どこか違う。冷たくて、自分のでは無いような記憶。 でも、あの夜だけは別。あんたが『一緒になれ』って言ってくれた夜は…。」
虫の声。 流れる川の音。 乾いて少し冷たかった夜の風。 輝いていた星。
「あの時、私は芝居をする事を忘れてた。 …ただ、嬉しかった。 幸福で残酷な記憶。でも、唯一つ感じることのできる、あんたとの記憶。それがあんたの中から消えることが、怖かった…。」
力なくホァンを見上げる志保子に、ホァンは言葉を絞り出す。
「お前なんだな。俺の記憶が消されぬよう計らったのは。」

不意に鈴の音が響いた。ハッとして見ると、マオが黒の横に降り立つ。
「おい、まだなのか。」
「知り合いらしいな。」 黒の静かな声。 ホァンはむきになって叫ぶ。「関係ねぇ!」
「ミスったのはその女のせいか。」 「関係ねぇって言ってるだろ!!」
「…だったら。」 冷静な黒の視線を浴びて、ホァンは改めて銃を握りなおした。「急かすな…。」
志保子に狙いを定める。覚悟を決めたように目を伏せる志保子。 ホァンの銃を持つ手が震える。
「ざまぁねぇな…。」 銃を下ろし、黒へと差し出した。「これで俺とこいつを撃て。」
「案外、人間くさいとこがあるんだな。」 黒が微笑を湛えてゆっくりと歩み寄る。
「契約者に言われたかねぇ。」 褒められて少し照れたようなホァンの横顔。
「分かってるのか、ホァン。こいつも契約者なんだぞ? 」 「へっ、惚れたもんの弱みってやつよ。」
強がるホァンを、志保子は痛ましそうに見つめる。
「早くしろ! 」 拳銃を受け取ると、黒はホァンに狙いを定めた。 グッと目を瞑るホァン。
だが、黒はやがて銃を持つ手を下ろした。 「?!」 ホァンは呆然と黒を見る。
「黒、何だよ!! お前まさか、見逃すつもりじゃ…!!」 マオが驚愕して問い詰めると、黒は静かに振り向いた。
「冗談じゃないぞ、こないだのドールの時とは訳が違う! やらなきゃこっちがやられるんだ!」
「…マオ。」 「ん?!」 「俺たちは一体何だ。ただの組織の狗か?」
「馬鹿な事を考えるな! こいつと俺たちとは所詮違う!! 」

「契約者とか人間だとか、どうでもいいことだ。 俺たちは何度こいつに助けられた?」

思いもよらない黒の言葉に、固まったままのホァン。何か言うべきなのに、気の利いた台詞が見つからない。
「ホァン、組織に話せ。彼女を脱出させた今、情報漏洩の心配は無い。殺す必要は…」 だが、ホァンは首を振った。
「そうじゃねぇ。これはペナルティなんだ。」 「…なに?」
「一度ミスった俺たちへのな。組織は俺と志保子の関係を知ってる。知ってて命令してきたんだ…!」

「だったら、逃げろ。」 「なに?! 」 「彼女と一緒に。」 「ふ、ふざけんじゃねぇぞ!逃げられるわけがねぇ。お前達にだって組織の手が…!」
慌てるホァンを、黒は微笑んで見つめた。 「あんたの心配することじゃない。」
ホァンも、黒の頼もしい笑顔に押し黙ってしまう。
「し…知らないぞ!! 俺は何も聞いてねぇからな! 」 マオは真っ青になり、階段を駆け上がっていく。
けれど、志保子は沈んだ表情で俯く。 「行けるはずがない…。私も所詮は契約者だし、また契約者としての感情が戻ってしまえば…。」
ホァンはそんな志保子に穏やかな声を掛けた。 「あいにく、契約者との付き合いは長いんでな。時々、自分とこいつらの違いも分からなくなるくらいに。」
優しく微笑むと、スッと顔を引き締めて志保子を見る。
「逃げよう。二人で。」


夜明け前の波止場。ホァンの運転する車が横付けされた。 助手席には、ホァンのコートを借りて羽織る志保子の姿。
「あの倉庫の中に黒がいる。手はずを整える間、そこで待ってろ。」 志保子を気遣うような、温かなホァンの声。頷いて志保子が車を降りる。
倉庫の屋根には、マオがひっそりと佇んでいた。あんな事を言っていても、心配で堪らずに見守っていたのだ。
不意にマオが毛を逆立てて身を伏せる。 視線の先には…組織からの連絡役の男が。
男の姿を発見した志保子。だが、ホァンが「どうした?」と声を掛けると「…いえ」と呟き、そっとホァンを見つめた後でドアを閉めた。
《 やはり組織に気づかれている。この人を救わなければ。何としても。 》

空が明けて来た。 朝の明るい日差しが港を包む。
ホァンのコートで暖を取りながら、志保子は穏やかな表情で黒に語りかける。
「不思議なんだ…。今は契約者の感情のはずなのに、何か…本当に嬉しい。 そういうのって、ありなのかな?」
「契約者だって、人間だろ?」 シャッターにもたれて黒が返す。当たり前な事のように。 その言葉を聞いて、志保子は力強く頷いた。
「そうだよね。ありだよね。 …それで充分。」
「え?」 どこか今までと違う志保子の口調に怪訝なものを感じて、黒が目を上げた。 すると同時にシャッターが上がり、ホァンが入ってくる。
「30分後にボートが来る。埠頭の外れだ。移動するぞ。」
目を伏せていた志保子は、何かを決意した眼差しを開く。

倉庫からホァンに導かれて歩き出す。ふと、志保子の声が聞こえた。「…キヨピィ。」
「ん?」 何気なく振り向いたホァンが見たのは、瞳を紅く輝かせて凝視する志保子。 一瞬、驚いて体をかわす。 その隙に志保子は駆け出した。
急ブレーキの音が響く。黒とホァンが駆けつけると、大型トラックに跳ね飛ばされた瀕死の志保子の姿が。
「志保子ーっ!」 絶叫してホァンが走る。抱き起こすが、すでに志保子の命は尽きようとしていた。「おい、しっかりしろ!!」
「…キ…ヨ……」 わずかに口が動き、やがて瞳が力なく閉じられる。
「志保子…!!」
人の気配を感じて黒が背後へ目をやると、連絡役の男が静かに立ち去っていく。
「気づいていたんだ。すでに組織の手が回っていることを。」
黒とマオが見守る中、ホァンは呆然と座り込む。

「そんなんじゃねぇだろ…。なぁ黒、契約者は自殺なんて考えたりしねぇよな…? なぁ…志保子。 もう…騙すなよ…」

埠頭に雨が降り出す。 まるで----ホァンの涙のように。


「久野さん。…久野さん。どうしちゃったの?」
磯崎の妻・静香の居酒屋で、いつものようにホァンはカウンターに座っていた。手元のグラスには水滴が付き、すでにビールの泡は消えてしまっている。
「どうやら、夢を見ていたみてぇだ…。」
「酔った?」

「…酔いてぇな…。できることなら。」


もう戻らない、あの笑顔。 志保子はホァンの胸に痛みを遺し、散っていった…。



☆:':".:*:☆:':".:*:☆:':".:*:☆:':".:*:☆:':".:*:☆:':".:*☆:':".:*:☆:':".:*:☆:':".:*:☆:':".:*:☆:':".:*:☆:':".:*☆:':".:*:☆:':".:*:☆:':".:*:☆:':".:*:☆



アルマの言葉は、黒が自分を閉じ込めていた束縛から一気に解放していく。

「契約者と人間の違いは、その【合理的な判断】という考え方。 それ以外は何ら変わることがない。」

黒は、吹っ切れたのだと思う。

今まで無理やり自分に言い聞かせていた〔契約者と人間の違い〕。

それが崩れ去った時、黒の前から霧が晴れるように迷いが消えた。

『契約者だって、人と同じ。 合理的判断に縛られて自分を否定し、人間らしい感情を抑え込んでしまう必要など何処にもないんだ。』

だから、黒は自分の思いに真っ直ぐ向き合おうとしたのですね。

「逃げろ、ホァン。 彼女と一緒に。」

それは、契約者の合理的判断とは最も遠い選択。
そして同時に、一番人間的な選択でもある。
罪を償いたいと願ったアルマが黒の心を動かし、やがて黒は周囲のホァンやマオ、志保子をも大きく変えていくことに。

「あんたの心配することじゃない。」
ホァンに微笑む黒の笑顔が、とても…とても素敵でした。


「契約者だって、人間だろ?」
自分の感情を肯定してもらえたことで、志保子は「それで充分」と感じた。

久野からも、無理を承知の上での「一緒に逃げよう」という温かな感情を受け取り、もう思い残すことはない、と。


契約者になってしまった人を待ち受けるのは、自分の能力への絶望と、周囲との隔絶、強い孤独感なのかも。

すべてをひっくるめて「それでいい。そのままでいい。」と受け止めてもらえることが、契約者やドールといった人々に最も必要なことなのでしょうね。

それは、自分という存在を自ら受け入れるという事だから。



能力と感情を持つ自分を、あるがままに受け止めた黒。

彼が、これから何を目指そうとするのか。

楽しみです…!!





にほんブログ村 アニメブログへ


人気ブログランキング


DARKER THAN BLACK-黒の契約者- Vol.2



DARKER THAN BLACK-黒の契約者- Vol.2 [DVD]

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(35件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
DARKER THAN BLACK 黒の契約者第20話 「あさき夢見し、酔いもせず…後編」
第20話 「あさき夢見し、酔いもせず…後編」 ...続きを見る
Happy☆Lucky
2007/08/19 18:05
Darker Than Black 黒の契約者 20話 契約者の感情?
一度愛したヒトを、そう簡単に忘れられるワケが無い。 ...続きを見る
ふしぎなことだま
2007/08/19 18:12
DARKER THAN BLACK-黒の契約者-第20話 「あさき夢見し、酔いもせず…後編」感想もど...
[[attached(1,center)]] {{{  いやぁ…泣けた。ホアンがこれで好きになってしまったじゃないか(><) ...続きを見る
気ままスペース
2007/08/19 18:13
???????????
??????????????????????????????????????????????????????????????????(&???)???????????????????????????????????????????????????????... ...続きを見る
????
2007/08/19 18:15
Darker than BLACK -黒の契約者- 第20話「あさき夢見し、酔いもせず…(後編)」
DARKER THAN BLACK 黒の契約者 本作開始当初からの疑問を、今更ながらに認識されても困るのですが、やっとたどり着いたといった感じですね。まあ、クレイモアが殆どの場合、自ら志願して半妖になっているのに対して、契約者は志願してなったわけではない(と思われる)とい.... ...続きを見る
パプリカさん家のアニメ亭
2007/08/19 18:39
DTB20〜夢見る契約★者
 なんだか、いい話だったなぁ。最後、しんみりしちまったよ。  と言いつつ、アルマが能力を使って若返るとき、目を見張るヘイに大爆笑。 まさに、ピンポイントで、 ヘイのタイプだったらしい(爆)。   とこ ...続きを見る
夢見る不惑☆星
2007/08/19 18:48
DARKER THAN BLACK 黒の契約者 第20話
『なぁ志保子・・・もう・・・騙すなよ』 まさかホアンに泣かされる日がくるとは思ってなかったとも・・・! しかも感想書く為に一晩置かされる程、考えさせられるともね!! ...続きを見る
風庫~カゼクラ~
2007/08/19 18:53
流星のごとく…
DARKER THAN BLACK 第20話。 今回を見た後で、黒の妹・白の正体の悲しい妄想をした。 ...続きを見る
Fere libenter homine...
2007/08/19 18:53
DARKER THAN BLACK #20 あさき夢見し(後編)
テレビ版の 『DARKER THAN BLACK 黒の契約者』 を見ました。(以下 「あさき夢見し、酔いもせず…(後編)」 のネタバレです。まだご覧になっていらっしゃらない... ...続きを見る
ビヨビヨ日記帳
2007/08/19 19:04
DARKERTHANBLACK-黒の契約者- 第20話「あさき夢見し、酔いもせず...
DARKERTHANBLACK-黒の契約者-の第20話を見ました。第20話 あさき夢見し、酔いもせず…(後編)「遅いぞ、呼び出したくせに」「上から命令が来た。教祖の殺害を再度実行する」「分かった…」「まだある。捕らえられた女の処分だ」「使い捨てか?」「今度は失敗できねえ、俺が... ...続きを見る
MAGI☆の日記
2007/08/19 19:45
DARKER THAN BLACK -黒の契約者- 20話「あさき夢見し、酔いもせず…後編」
『教団本部へ再び潜入する黒と黄。監禁された志保子から教祖アルマの居場所を聞き出す黒。かつての恋人と7年ぶりの再会を果たした黄は、同僚を殺害するに至った経緯を聞きだそうとする。イブニングプリムローズの雨霧はア& ...続きを見る
Spare Time
2007/08/19 20:01
Darker Than Black黒の契約者#20「あさき夢見...
組織の人間と契約者が逃げて一緒に暮らす。淡い夢は埠頭に消えた。黄はまた酔えない酒を飲み続ける。「あさき夢見し、酔いもせず…後編」あらすじは公式からです。教団本部へ再び潜入する黒と黄。監禁された志保子から教祖アルマの居場所を聞き出す黒。かつての恋人と7年... ...続きを見る
おぼろ二次元日記
2007/08/19 20:28
DARKERTHANBLACK 黒の契約者 第20話 酔えない男
内容教祖アルマの始末に失敗したヘイ。そして、再度実行の命令がホァンに下る。しかし、マオにも。別の命令が下る。突入するホァンとヘイ。援護するマオ。志保子とホァンが揺動する間に、ヘイは、アルマのいる場所へと近づいていく。。。。アルマ『わかるかい契約者と人間... ...続きを見る
レベル999のマニアな講義
2007/08/19 21:14
「合理性」と「人間性」の狭間であなたを救う/『Darker Than Black−黒の契約者−』/第...
「私は見てきたよ……。契約者と人間を結ぶ在るべき形を」(アルマ) ...続きを見る
サブカル・カムカム
2007/08/19 21:17
DARKER THAN BLACK 黒の契約者 第20話 「あさき夢見し、酔いもせず…後編」
茹で卵かよ!! コレステロールかよ!!それだけなのかよ!! ...続きを見る
でりら日記
2007/08/19 21:25
黒の契約者 第20話「あさき夢見し、酔いもせず…後編」
仕方ないとは言え、津波情報が邪魔だ〜、な画面でした。 なんだか、思っていたよりも良い話だったなぁ。結末はやっぱり苦いけど。 今まで上がっていたマオの株がちょっぴり下がって、黄の株が上がった、って感じです。 ...続きを見る
見ていて悪いか!
2007/08/19 21:32
DARKER THAN BLACK -黒の契約者- 第20話
     「あさき夢見し、酔いもせず・・・(後編)」 あらま!ホアンが意外にも身軽だわっ!! ...続きを見る
ミルクレモンティー
2007/08/19 22:39
『DAKERTHANBLACK・黒の契約者』 #20 「あさき夢見し、酔いもせ...
契約者に心はない。・・・そうだったかい?。あらすじは公式HPから教団本部へ再び潜入する黒と黄。監禁された志保子から教祖アルマの居場所を聞き出す黒。かつての恋人と7年ぶりの再会を果たした黄は、同僚を殺害するに至った経緯を聞きだそうとする。イブニングプリムロー... ...続きを見る
よろず屋の猫
2007/08/19 23:20
DTB-黒の契約者- 第20話「あさき夢見し、酔いもせず…後編」
酔いてぇなぁ・・・出来ることなら ...続きを見る
●○PEKO LIFE●○
2007/08/19 23:27
DARKER THAN BLACK 黒の契約者第20話「あさき夢見し、酔いもせず…後編」
 黄がメインのこのエピソード。ただの醜いおやじであった黄に少しは思い入れが出来るようになるのでしょうか? ...続きを見る
アンカー教授のたわごと
2007/08/19 23:33
Darker Than Black 黒の契約者 第20話
第20話 ...続きを見る
主婦Yのアニメ話〜 Y no Anime
2007/08/20 03:16
DARKERTHANBLACK黒の契約者#20もう、騙すなよ
それは偽りの愛のはずだった。なのに・・ないはずの感情が女を支配した。消せない思い出が女の命の炎を消した。酔えない男が酔った、たった一度の思い出。男が酔ったのは、酒にかそれとも愛にだったのか・・第20話「あさき夢見し、酔いもせず…後編」公式HPよりあらすじ... ...続きを見る
帰ってきた二次元に愛をこめて☆
2007/08/20 04:20
DARKER THAN BLACK 第20話
サブタイトル「あさき夢見し、酔いもせず…後編」   ホァンに下る非情な指令。   志保子の口から、過去の事件の真相が語られる。 ...続きを見る
オヤジもハマる☆現代アニメ
2007/08/20 05:23
「DARKER THAN BLACK 黒の契約者」#20 もはや心がないとは言わせない。
切ないのはDTB、毎度のことですけどね。 今回は渋切なかったですねー。 ...続きを見る
橘の部屋
2007/08/20 07:58
DARKERTHANBLACK黒の契約者第20話あさき夢見し、酔いもせず…後編
「監禁された志保子を助け出し、教祖アルマの居場所を聞き出した黒はアルマを殺しに向かうのだが」「DARKERTHANBLACK黒の契約者第20話あさき夢見し、酔いもせず…後編」「黄の過去話の後編…磯崎殺しの真実と共に黄は志保子に銃を向けるが殺せなかった」「志保子から聞き... ...続きを見る
翔太FACTORY+Zwei
2007/08/20 10:15
(アニメ感想) DARKER THAN BLACK -黒の契約者- 第20話 「あさき夢見し、酔いも...
DARKER THAN BLACK-黒の契約者- Vol.2 ...続きを見る
ゲームやアニメについてぼそぼそと語る人
2007/08/20 11:46
DARKER THAN BLACK・第20話
「あさき夢見し、酔いもせず…(後編)」 再び黒たちに下された「教祖暗殺」の指令。 ...続きを見る
たこの感想文
2007/08/20 12:12
「DARKER THAN BLACK 黒の契約者」レビュー2
「DARKER THAN BLACK 黒の契約者」についてのレビューをトラックバックで募集しています。 *キャラクター(声優):黒(木内秀信)、銀(福圓美里)、猫(沢木郁也)、黄(池田勝)、霧原未咲(水樹奈々)、斎藤雄介(志村知幸)、松本邦夫(福田信昭)、河野豊(鳥海浩輔.. ...続きを見る
アニメレビュー トラックバックセンター
2007/08/20 18:21
レビュー・評価:Darker than BLACK 黒の契約者/第20話 「あさき夢見し、酔いもせず...
品質評価 6 / 萌え評価 6 / 燃え評価 11 / ギャグ評価 3 / シリアス評価 16 / お色気評価 3 / 総合評価 12レビュー数 105 件 ...続きを見る
ANIMA-LIGHT:アニメ・マンガ・...
2007/08/20 20:11
darker than BLACK 第20話 感想
 皆さんコミケで感想どころではないかもしれませんが、自分はこれ書いてから行きます! ...続きを見る
荒野の出来事
2007/08/21 00:55
DARKER THAN BLACK -黒の契約者- 第20話「あさき夢見し、酔いもせず…(後編)」
酔えるものなら・・・ ...続きを見る
Hiroy's Blog
2007/08/21 06:21
DARKER THAN BLACK 黒の契約者 第20話「あさき夢見し、酔いもせず…後編」
契約者とか人間だとか、どうでもいいことだ――。 ...続きを見る
SERA@らくblog
2007/08/21 09:40
DARKERTHANBLACK黒の契約者第20話「あさき夢見し、酔いもせず…(...
黒の契約者。今回は後編。すでに暗い要素しかなくて見るのがつらいな・・・。DARKERTHANBLACK -黒の契約者-3早速感想。ってか死にそう。コミケ一日目の余波がここまでつらいとは。何人のブロガーとすれ違ったのか気になるところですよね。三日目も行く予定なので、そっち... ...続きを見る
物書きチャリダー日記
2007/08/21 11:12
◎DARKERTHANBLACK-黒の契約者-第20話「あさき夢見し、酔いもせず...
教団本部へ再び潜入する黒と黄。監禁された志保子から教祖アルマの居場所を聞き出す黒。かつての恋人と7年ぶりの再会を果たした黄は、同僚を殺害するに至った経緯を聞きだそうとする。イブニングプリムローズの雨霧はアンバーの命を受け、現われた黒と対峙する。そして、... ...続きを見る
ぺろぺろキャンディー
2010/01/01 20:41
プラダ トート
『黒の契約者』第20話「あさき夢見し、酔いもせず……後編」〔感想〕 アクロイアへようこそ/ウェブリブログ ...続きを見る
プラダ トート
2013/07/10 07:55

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
『黒の契約者』第20話「あさき夢見し、酔いもせず……後編」〔感想〕 アクロイアへようこそ/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる